米小売業のGameStopが、保有現金を用いたビットコインの購入方針を発表し、投資額に上限を設けない戦略が市場に衝撃を与えた。これを受けてGME株は26日に約15%急騰し、年初来安値からの上昇幅は35%に達している。同日には第4四半期純利益が前年同期比で倍増し、流動性も大幅に改善したことが判明しており、短期的な好材料が重なった格好だ。

一方で、MicroStrategyのような中長期的成長への期待が広がる一方、ウォール街の評価は依然として厳しく、平均目標株価は現値より大きく下方の10ドルに設定されている。現在の評価が楽観視に値するかは、ビットコイン戦略の実効性と持続的な業績改善にかかっている。


ビットコイン無制限購入方針がもたらす戦略的転換点

GameStopが公表した「無制限のビットコイン購入方針」は、財務戦略として極めて異例であり、現金保有の運用において明確なリスク選好を示すものとなった。同社はこの方針により、既存の小売業モデルに加えて、暗号資産の価格変動を財務構造に直接取り込む構えである。MicroStrategyの事例に倣い、株式価値の上昇を暗号資産の保有によって補完する意図が背景にあると考えられる。

ただし、MicroStrategyの成功がそのまま再現される保証はなく、同社が採用したのは戦略的に一貫した長期的なBTC蓄積であった。一方のGameStopは、これまで暗号資産と明確な接点を持っておらず、市場とのコミュニケーションも限定的であるため、今回の発表が突発的な株価対策と受け取られる可能性もある。無制限という表現も、市場に対してリスク管理上の疑念を生じさせやすく、今後の開示姿勢が試されることになる。

純利益倍増と流動性急増が示す財務体質の変化

同日に発表されたGameStopの第4四半期決算は、前年同期比で純利益が約2倍となる1億3100万ドルを記録し、過去数四半期の業績停滞からの転換を印象づけた。また、直近12ヶ月での流動資産は11億9000万ドルから47億7500万ドルへと急増しており、資金余力が大幅に強化されたことは注目に値する。これにより、同社が新たな投資戦略に踏み出すだけの土台は整ったと見ることもできる。

もっとも、この急激な財務の好転は、営業成績の持続的改善に基づくものではなく、一時的な費用圧縮や資産売却による可能性も否定できない。財務体質が一時的に改善されたとしても、それが将来の収益力を確保するとは限らない。ビットコイン投資に資金を振り向ける前に、本業の持続可能性と収益基盤の強化こそが問われる局面にあるといえる。

市場の熱狂とウォール街の警戒感が示す評価の乖離

GME株は3月26日の発表直後に15%の急騰を見せ、年初来安値からの上昇幅は35%に達した。投資家の一部は、MicroStrategyのような株価成長の再現を期待し始めている。しかしながら、ウォール街のアナリストの目は依然として冷静で、Barchartが追跡する唯一のアナリストは「強い売り」を提示しており、目標株価も現在値から65%下方の10ドルに設定している。この評価差は、市場の短期的な思惑と、専門筋の慎重な見通しの対比を浮き彫りにしている。

このような評価の乖離は、GameStopという企業のアイデンティティと将来戦略に対する不透明感を反映している。ビットコインというボラティリティの高い資産に依存する姿勢は、短期的な株価上昇を演出できる一方で、経営の持続可能性や収益の一貫性に対する不安も助長しかねない。投資家の期待が先行する今こそ、企業としての基本戦略とガバナンス能力が厳しく問われる段階に入っている。

Source: Barchart