MicrosoftはWindows 11の22H2および23H2向けに、更新プレビュー「KB5053657」の配信を開始した。今回のアップデートでは、プリンターの誤動作やリモートデスクトップのトラブルシューティング不具合、仮想ディスク環境下でのブルースクリーンなど、ユーザー体験に直接影響を及ぼす複数の問題が修正された。

同時に、「設定」内に重要なシステム情報を簡潔に確認できる新たなUI要素「トップカード」の表示や、ゲームパッド対応のオンスクリーンキーボード、改良されたファイルシステムフィルタードライバなど、日常的な操作性を向上させる機能も段階的に導入される。

リモートデスクトップとプリンターの深刻な不具合が修正対象に

今回のWindows 11向けプレビュー更新「KB5053657」では、リモートデスクトップセッション中に「Get help」ツールが起動しないというトラブルや、USB接続プリンターによる誤出力といった、ユーザー操作に直結する重大な不具合が修正された。とくにプリンター問題は、USB PrintとIPPの両方式を併用する機器で予期しない文字が出力されるという厄介な現象であり、業務や学習環境における支障も少なくなかった。

さらに、仮想ディスク形式VHD(X)にユーザープロファイルを保存している環境で、システムがブルースクリーンを表示する不具合も対応された。これらの修正により、特定の運用環境で頻発していた予測不能なトラブルが軽減されるとみられる。

このような問題は、単なるバグというよりも、日々の作業や使用環境に密接に影響する性質を持つだけに、今回の修正は細かく見えても実効性は大きい。機能追加よりも、まずはこうした安定性の確保に注力した姿勢は評価できる。

トップカードやゲームパッド対応など細やかな機能強化が進行中

更新プレビューでは安定性向上に加えて、日常の操作効率に寄与する機能追加も含まれている。たとえば、「設定」→「システム」→「情報」内に表示される「トップカード」は、CPUやメモリ、GPUなどのハードウェア情報をひと目で確認できる新しいUI要素で、従来の多層的なメニュー操作を経ずに状態を把握できる。

また、オンスクリーンキーボードの操作性も進化し、ゲームパッドレイアウトに対応。これにより、「X」ボタンでバックスペース、「Y」ボタンでスペース入力といった、コントローラー主体の入力環境を意識した工夫が見られる。

一方で、これらの機能はすべてのユーザーに即時適用されるわけではなく、段階的な展開が採用されている点には注意が必要だ。とはいえ、こうした小さな改善が蓄積することで、日々の使い勝手には確実に変化が生まれる。常時利用する基本機能の快適性向上こそ、OSアップデートの中核と捉えたい。

Windows 11 24H2には依然としてプレビュー未提供

現時点でWindows 11の24H2ビルドには今回のようなプレビュー更新は提供されていない。これは以前の更新時と同様の傾向であり、Microsoftは最新ビルドに対するプレビュー配信にやや慎重な姿勢を見せている。

ただし、同社が「Windows Release Health Notes」で言及している通り、24H2環境で発生していたリモートデスクトップ接続のフリーズや切断などの問題については、3月の正式なセキュリティ更新で修正が行われている。

また、Dirac Audioや「cridspapo.dll」に関連する音声出力の不具合については、今回のプレビューでの対処有無が明言されておらず、依然として対象外の可能性が残る。24H2利用者にとっては、アップデートタイミングと対応範囲を見極めながら慎重に環境を整える必要があるだろう。

Source:heise online