マイクロソフトがアメリカとヨーロッパで進行中だった複数のデータセンタープロジェクトを打ち切ったと、ブルームバーグが報じた。TD Cowenのメモをもとにしたこの報道では、「数百メガワット」規模のリース契約の削減が示され、少なくとも2拠点のハイパースケール施設に影響する可能性があるという。

背景にはクラウドサービスの需要停滞や効率性重視への戦略転換があるとされ、エネルギー確保のため原子力活用も検討中。一方でマイクロソフトは、年間800億ドル超のインフラ投資を継続しており、地域別の調整に過ぎないとの姿勢を示している。

AIやクラウドを支える基盤が揺らぐ中、同社の長期的なインフラ戦略と競合との動向が注視される。

米欧での複数プロジェクト中止と数百メガワット規模の削減が示す現実

ブルームバーグの報道によれば、マイクロソフトはアメリカおよびヨーロッパにおいて複数のデータセンター計画を打ち切ったとされる。その根拠となるのは、投資銀行TD Cowenが作成したメモであり、同社が「数百メガワット」におよぶリース契約の削減に踏み切ったとの内容が記されている。Azureのようなハイパースケール型クラウド施設は、1施設あたり100メガワット前後の電力を消費することから、今回の中止は少なくとも2基以上の大規模施設に影響すると見られる。

また、この動きは、テキサス州で新たに475メガワットの太陽光発電を確保した事実と対照的であり、今後の運用方針において再生可能エネルギーとの連携が強化される可能性を示唆する。一方、マイクロソフトの広報は「戦略的な調整」に過ぎず、成長地域へのリソース再配分の一環と説明している。この説明と削減の規模感にはギャップがあり、真の意図をめぐってさまざまな解釈が生まれている。

インフラに関する判断がサービス品質や提供スピードにどう影響するかは今後の動向次第だが、エネルギー供給と設備運用のバランスを取る難しさが改めて浮き彫りになっている。

Azure成長の鈍化か効率化への転換か 浮かび上がる複合的な要因

マイクロソフトはAI機能を搭載したCopilotや、OpenAIとの連携によるクラウドサービス、さらにXbox Cloud Gamingなどの高負荷プラットフォームを展開してきた。これらはすべて莫大なサーバーリソースと常時稼働するインフラを必要とする。しかし今回、需要が鈍化したことで供給過剰に陥ったという見方もあり、クラウドの成長が一段落した兆候ではないかと一部で指摘されている。

また、電力効率に優れたAIモデルの登場が技術選定に変化をもたらしている可能性も否定できない。中国のDeepSeekが開発したモデルがOpenAIよりも低電力で動作すると報じられたのは記憶に新しい。こうした状況のなかで、マイクロソフトは「生のパワー」重視から「効率性」重視へと方向性を見直しつつある可能性がある。

加えて、AIインフラへの国家規模の投資が発表されたタイミングと重なることで、競争の中で戦略の練り直しを迫られているとも考えられる。単なるプロジェクト中止ではなく、より深い技術的・社会的転換の入り口に立っているのかもしれない。

Source:Windows Central