AI向けGPUクラウド事業を展開するCoreWeaveが、3月27日の上場を目前に控える中、保有する25万個のNvidia製Hopperチップの将来的な価値に懸念が広がっている。これらは2023年から24年にかけて最先端とされたが、Nvidiaが新世代「Blackwell」チップの圧倒的性能を公表したことで、Hopperの陳腐化リスクが顕在化。
特にレンタル価格の下落や収益圧迫の可能性が、CoreWeaveの成長戦略に影を落としている。約80億ドルの借入を背景に構築されたGPU資産の償却スケジュールや市場ニーズの変化が、同社の財務健全性と評価に今後どう影響するか、投資家の注視が集まっている。
Hopperチップ25万個の価値低下とCoreWeaveの収益構造への影響

CoreWeaveは、主力製品であるNvidiaのHopper世代GPUを25万個保有し、これをAI開発者に時間単位で貸し出すことで収益を得てきた。H100チップは2023年から24年にかけて高性能を誇り、1時間8ドルで貸し出されるなど極めて高い需要があった。しかし2024年末からNvidiaが新世代「Blackwell」を市場に投入したことで、性能面で大幅な差が生まれた。Nvidia CEOのジェンスン・フアンはGTC 2025でBlackwellの演算性能がHopperの最大40倍と発言しており、価格競争力に深刻な影を落としている。
Hopperのレンタル価格は既に2ドル以下に下落し、性能差を考慮すればさらに65%以上の値下げが必要とされる。これにより、CoreWeaveの短期収益だけでなく、約80億ドルを投じたインフラ資産の長期収益性にも疑問符がつく。AI開発需要の高まりに支えられたGPUクラウド事業だが、急速な技術進化の波に乗り遅れた場合、同社の想定する5〜6年の使用期間が短縮されるリスクも否定できない。収益構造が価格下落に過度に依存する現在のモデルは、変化への柔軟な対応を迫られる局面に差し掛かっている。
技術革新の加速がもたらす設備資産の急速な陳腐化
CoreWeaveが直面する課題の本質は、Nvidiaを中心とするGPU技術の革新速度にある。Nvidiaは2026年末にはBlackwellのアップグレード版を投入予定であり、旧世代との性能差がさらに広がる可能性が高い。Barclaysのロス・サンドラー氏も指摘するように、クラウド業者が保有する資産は次世代登場により急速に陳腐化しており、財務上の償却計画すら見直しが求められ始めている。
特に問題となるのは、CoreWeaveが自社インフラの価値評価に基づき借り入れた多額の債務である。GPUは担保としても利用されており、その価値低下は信用リスクや追加資金調達にも波及しかねない。さらに、同社は「最新技術の導入を前提に旧設備の入れ替えを継続的に行う」と述べているが、入れ替えのたびに発生するコストとROIのバランスは不透明である。設備の長期活用を前提とする戦略と、進化の速度が加速する現実との乖離が今後の経営判断を難しくするだろう。
その一方で、Nvidiaとの関係性は依然として良好で、同社は今後も最新チップの供給を受けることができる立場にある。だが、その恩恵を受けるには設備更新の資金的余力と、次世代需要への的確な読みが不可欠であり、単なるGPU保有数ではもはや競争優位を維持できない時代が始まっている。
Source:CNBC