電気自動車大手テスラの株価が3月26日、前日比5.6%安の272.06ドルで取引を終えた。過去5営業日で約28%上昇していたが、販売減速懸念や関税リスクの再燃が重しとなった。

4月2日には第1四半期の納車台数が発表予定で、予想414,000台に対し最新の市場予測は約360,000台にとどまる。関税問題では、トランプ前大統領が同日よりカナダ・メキシコからの輸入品に25%の関税を課す構えで、テスラを含む米自動車業界への影響が注視されている。

加えてカナダ政府が電気自動車購入補助金の対象からテスラを除外する方針を示し、北米市場での政策的逆風も浮上した。

株価急落の背景にある2つの不安要因

テスラ株が5営業日で約28%上昇した後、3月26日に一転して5.6%の下落を記録した背景には、投資家の間で拡大する「販売不振」と「関税リスク」への警戒感がある。2月の販売台数は前年比で40%減となり、年初からの累計では43%の減少に達した。これはモデルYの刷新による一時的な供給調整や、CEOイーロン・マスクの政治的活動に対する市場の反応といった複合的要因によるものと見られている。

また、4月2日に発表予定の第1四半期の納車実績に対しても不透明感が漂う。FactSetの集計では414,000台の予想が示されているものの、実際の市場推計は360,000台前後にとどまり、予想との乖離が株価の不安材料となっている。さらに、トランプ前大統領が同日から発動を予定しているカナダ・メキシコからの輸入品への25%の関税も、コスト上昇懸念を加速させた。

販売不振と政策リスクが同時に意識されることで、短期的な株価上昇を牽引していた楽観ムードに急速な冷却が入ったといえる。

カナダの補助金除外とテスラの対応戦略

カナダ政府は3月26日、米国の関税政策を受けて、国内での電気自動車補助金制度からテスラ車を除外すると発表した。運輸大臣クリスティア・フリーランドは、テスラ車が米国製であることを理由に、5,000カナダドルに相当する購入補助金の対象から外すよう指示した。これはテスラにとってカナダ市場での販売戦略を見直す必要性を示唆するものである。

同様の動きは2月にもトロント市で見られ、テスラ車がリムジンおよびタクシー向け補助プログラムから除外されており、米国の貿易政策が波及する形で地域レベルでも影響が顕在化している。関税そのものの負担だけでなく、各国による報復的措置の余波が販売実績やブランドイメージに及ぼすリスクは軽視できない。

一方で、CFRAのアナリスト、ギャレット・ネルソンは、テスラの地域生産体制により影響は最小限にとどまると見ており、同社の長期的な競争力を評価して「買い」推奨を継続している。テスラは2022年から2024年にかけてCars.comにより「最もアメリカ製の自動車企業」と位置づけられた実績があり、北米での生産と部品調達を高水準で維持している点が強みとされる。

カナダの補助制度変更は象徴的な動きだが、それがテスラの世界的戦略全体に及ぼす影響は限定的である可能性が高い。

Source:barrons