OpenAIの最新モデル「GPT-4o」による画像生成機能が、SNS上で「ジブリ風アニメ画像」として爆発的に拡散したことが波紋を広げている。プロンプトひとつで、著名人や歴史的写真をスタジオジブリ調に変換できるこの機能は、有料ユーザーの間で急速に人気を集めた。
その利用過多により、当初予定されていた無料ユーザー向けの提供は急きょ延期となった。CEOのサム・アルトマンも予測を上回る需要に驚きを隠さない。一方で、宮崎駿監督の過去の発言や著作権上の懸念も再燃し、AIと創作文化の関係が改めて問われている。
GPT-4oが切り開いた画像生成の新局面とその技術的背景

OpenAIが発表したGPT-4oは、従来のDALL·E 3を介した手法とは異なり、テキストから直接ビジュアルを生成できる「ネイティブ画像生成機能」を内包する。これは画像・音声・動画などマルチモーダルな入出力に対応したオムニモデルとして設計されたものであり、スマートフォンに保存された画像や任意のウェブ画像を即座に加工・変換できる点で、既存の画像生成技術とは一線を画している。
この技術を活用し、ユーザーは「ジブリ風にして」という短い指示のみで、既存写真を自然かつ魅力的なアニメ風スタイルに変換可能となった。1989年の天安門事件の「タンクマン」やオサマ・ビンラディンの写真までもがジブリ調で再構成され、X(旧Twitter)を中心に大量拡散されたことで、タイムラインがその画像一色になる現象が発生している。
この利用集中により、当初予定されていた無料プランへの展開は延期された。サム・アルトマンCEOはX上で「予想を超える需要」と認めており、現在は有料プラン(Plus、Pro、Team)ユーザーのみが利用可能な状況が続く。こうした予想外のブームは、AI画像生成の大衆化とコンテンツの民主化という時代の潮流を象徴している。
ジブリ風画像の拡散が投げかけた著作権と文化的倫理の問題
AIによるジブリ風画像の氾濫は、技術革新の裏で表現の権利と創作の尊厳という問題を浮き彫りにした。スタジオジブリ創設者である宮崎駿監督は2016年、AIが生み出したアニメーションに対し「深い嫌悪と拒絶」を示していた経緯がある。現在もその姿勢は変わらないと見られており、ジブリのスタイルを模倣する生成画像が多数拡散される状況は、少なからぬ反発を生んでいる。
米国の著作権法ではスタイルの模倣は原則として違法とされていないが、ジブリという文化的象徴をAIが模倣することに対し、オリジナルへの敬意を欠いた行為とみなす声は根強い。特に、商業利用やブランド訴求を目的とした二次創作が拡大すれば、法的リスクや炎上リスクが現実となる可能性も否定できない。
OpenAIは使用した学習データを明示しておらず、著作権保有者からの反発が今後高まる可能性もある。拡散を支持するユーザーが多い一方で、文化的財産を守る観点から慎重な議論が求められる段階に来ている。技術の進化が創作の倫理とどう向き合うのか、今後の指針が問われる局面である。
Source:VentureBeat