次世代小型原子炉の開発で注目を集めるスタートアップ、オクロ(Oklo)がSPAC合併を経て上場してから株価が乱高下している。2024年2月の高値から55%超の下落を記録する一方、過去6か月では213%上昇という異例の動きを見せる。
AIやデータセンター需要の急増に伴うエネルギー需要拡大という追い風がある一方で、収益ゼロの状態で赤字が拡大し、財務の不安定さが懸念材料となっている。著名投資家ジム・クレイマーも「買うにはメガ早すぎる」と投機的リスクに警鐘を鳴らすなど、市場の見方は割れている。
アナリストの間では75MW出力の新モデルや買収による収益機会に期待が寄せられる一方、初号機の稼働は2027年以降にずれ込む見込みで、商業化には依然時間を要する。平均目標株価は現在の約1.7倍とされるが、その達成には不確定要素が多い。
オクロ株に立ちはだかる財務の現実と未確定な収益構造

2024年3月24日に発表されたオクロの決算では、純損失が前年の3,220万ドルから7,360万ドルへと急拡大し、赤字幅の大きさが浮き彫りとなった。売上は依然としてゼロであり、同社がAuroraマイクロリアクターの開発段階にある以上、商業的成果が現れるまでには相応の時間を要する。さらに、2025年にも損失が拡大する見通しが示されており、短期的な収益化は現時点で現実味に乏しい。
とはいえ、資金面では一定の余裕を保っている。AltCとのSPAC合併によって得た資金により、2024年末時点で現金および有価証券は約2億7,530万ドルを確保。これらの資金は、INLでの初号機建設、ライセンス取得、核燃料リサイクル推進、Atomic Alchemy社の運営などに充てられる計画である。しかし、商業炉としての稼働は2027年後半以降とされ、規制当局の承認も前提となるため、不確実性は残る。
現時点では、技術的優位性や原子力分野における政策的追い風があるとしても、財務的な裏付けの脆弱さが重くのしかかる。投資家は、株価の短期的変動ではなく、現金消費のペースと今後の資金調達戦略に冷静な目を向ける必要がある。
技術革新が開く成長余地と市場の期待感の温度差
オクロの主力製品「Auroraマイクロリアクター」は、使用済み核燃料を再利用し、燃料交換なしで10年以上稼働可能な革新的設計を特徴とする。出力は15MWから最大75MWまで拡張可能で、すでに3基の建設計画が進行中とされる。これにより、今後の電力不足やクリーンエネルギー需要に応える手段として、技術的ポテンシャルは高く評価されている。
また、2025年には放射性同位体の製造を手がけるAtomic Alchemy社の買収によって新たな収益機会が見込まれている。ガスから原子力への転換戦略を掲げたRPowerとの提携も発表され、将来的な事業多角化の布石と位置づけられる。アナリストも出力拡大によるコスト効率の改善に着目し、2026年初頭から収益貢献が始まる可能性を指摘している。
一方、市場の期待感は揺らいでいる。2月の高値から55%を超える株価下落は、収益構造の不透明さと過剰な電力需要見通しへの疑念が背景にある。たとえ技術が画期的であっても、規制・商業化の壁を越えるまでには時間と実績が不可欠であり、現時点での評価は過度な楽観と悲観のあいだで揺れている。
Source:Barchart