中国の動画共有サイト「Bilibili」で公開された開封動画により、Palit製とされるRTX 4090が、実際には前世代のGA102 GPUを搭載した偽物であったことが明らかになった。外装に改造の痕跡は見られず、刻印の再加工やMLCC配置の偽装など、極めて精巧な手口が用いられていた。
購入価格は正規品より大幅に安い3,800元(約530ドル)であり、これが唯一の不自然な点だったという。こうした偽造カードは過去にも確認されており、表面上の外観や動作だけでは判別が難しく、専門的な検証が必要とされる状況が続いている。
RTX 4090を装ったGA102の実態 精密に仕組まれた偽造の全容

問題となったグラフィックスカードは、中国の「Bilibili」ユーザーによって開封動画として共有されたもので、Palit製とされるRTX 4090の外観を持ちながら、内部には前世代のGA102 GPUが搭載されていた。搭載されたGA102はRTX 3090 TiやRTX 3080 Tiに使用されるものであり、本来のRTX 4090に求められるAD102とは明確に異なる仕様である。見た目には新品同様で改造の痕跡もなく、GPUの刻印は削られた上でRTX 4090のラベルが丁寧に再彫刻されていた。
加えて、MLCC(多層セラミックコンデンサ)の配置やコンデンサの位置、メモリチップのラベルの有無といった微細な構造の違いが、最終的に偽造を特定する決め手となった。UNIKO’s Hardwareもこの改造に関して、MLCC配置がRTX 3090と一致していること、角のドット位置に注目すべき点を指摘している。パッケージ価格は3,800元、日本円で約530ドルと相場より大幅に安く、これが数少ない警告サインであった。こうした偽装が可能なのは、GA102とAD102がピン互換かつサイズも類似しているという物理的な共通性が背景にある。
フラグシップGPUを狙う巧妙な詐欺 高価格化が偽造の温床に
RTX 4090は、Lovelace世代の最上位GPUとして高性能を誇る一方、価格も高騰を続けており、依然として市場での需要は根強い。高性能かつ高価な製品は、模倣のターゲットとして格好の存在となる。今回の事例でも、カードは外見・梱包ともに正規品と見分けがつかず、一般の購入者が性能検証を行うまでは偽物と気づけなかった点が特に注目される。しかも、Nvidiaのドライバーを通じた認識すら通らず、完全に動作しないという結果であった。
背景には、転売市場や偽造品の流通を支えるサプライチェーンの問題がある可能性も否定できない。RTX 4080を流用した偽4090、焼損部品を再利用したカードなど、過去にも複数の異なる偽装手口が確認されており、今回のケースはその一環と見られる。また、昨年にはAsus製品を名乗るGA102搭載の偽カードも話題となっており、一連の偽造事例に共通するのは、外観に細工の痕跡を残さず、技術的な知識がなければ見破れない点である。
技術的構造の類似性が悪用されるなかで求められる検証力
GA102とAD102は、いずれもNvidia製のハイエンドGPUであり、ピン配置の互換性やダイのサイズがほぼ同一という特徴を持つ。この構造的な近似性が、偽造者にとっては都合のよい条件となり、ダイの入れ替えという極めて高度な手口を実現させている。外見的には正規品と区別がつかず、刻印の再加工や部品の配置変更といった微細な改造でしか違いが見分けられない点は、極めて厄介である。
本来、こうした改造はエンジニアや技術系愛好家など専門的な知見を持つ人物でなければ気づけない。また、流通過程でこうした偽造カードが正規品と混在するリスクも否定できない以上、販売価格や信頼性の確認は極めて重要である。最終的な見極めには、外観ではなく性能やドライバ認識など、実動作による検証が求められるが、ユーザー側にその負担が転嫁される構図が常態化していることも無視できない問題である。
Source:TechSpot