NvidiaはAI向け合成データ生成技術を持つGretelの買収契約を締結した。取引金額は非公開ながら、Gretelの直近評価額3億2000万ドルを上回る9桁規模とされ、従業員約80名がNvidiaに合流する。GretelはMicrosoftとの提携実績もあり、合成データを通じたAI訓練の課題解決に寄与する可能性がある。
一方、Nvidia株は年初来で16%下落し、特に中国スタートアップDeepSeekのAIモデル発表時には1日で17%の急落を記録した。業績は市場予想を上回る結果を示しており、アナリスト評価は依然として「強い買い」が多数派であるが、株価の変動には慎重な姿勢も必要となる。
合成データの導入はAI産業における新たな地平を拓く一方で、技術的・倫理的リスクにも留意が求められる局面に差し掛かっている。
NvidiaのGretel買収が示す戦略的狙いとAI業界への波及効果

NvidiaがGretelの買収を通じて狙うのは、合成データ分野の強化とAIモデル開発におけるデータ供給力の拡充である。Gretelは統計技術や生成AIを用いて実世界に近似したデータを生成する能力を持ち、これにより実データに依存しない柔軟なAI訓練環境が構築可能となる。2022年のChatGPT登場以降、訓練データの不足がAI開発の主要課題とされてきた中で、Gretelの技術はその解決の一端を担うと期待されている。
また、同社はMicrosoftと2023年に提携しており、「Microsoft for Startups Pegasus」プログラムに参加するなど、一定の評価を受けてきた経緯がある。さらに、2024年11月には「Gretel Azure OpenAI Service」への統合も発表されており、Gretelの技術は既に大手との連携実績を有している。これらの背景を踏まえると、Nvidiaが単なる技術買収ではなく、将来的なプラットフォーム強化を視野に入れていることは明らかである。
ただし、合成データの品質やバイアスの問題、セキュリティリスクなど、実装に伴う懸念点も指摘されており、Nvidiaの今後の技術的対応と倫理的ガバナンスも注視する必要がある。
業績好調と株価下落が示す投資判断の難しさ
Nvidiaは2025会計年度第4四半期において、売上高393.3億ドル、利益220.9億ドルを記録し、いずれも市場予想を上回る結果となった。年間ベースでも利益728.8億ドル、売上高1305億ドルという実績を示しており、業績面では過去最高水準に達している。さらに、2026会計年度第1四半期の売上高についても430億ドルを見込んでおり、粗利益率はGAAPベースで70.6%とされるなど、財務的には極めて安定した成長軌道にある。
一方、株式市場の反応は逆風を含む。中国スタートアップDeepSeekのAIモデル発表を受けた際には、NVDA株が1日で17%下落するなど、AI分野での競争激化が投資家心理を揺さぶる材料となった。年初来では同株は16%の下落を記録しており、業績と株価の乖離が際立っている。
現在、44人のアナリストのうち38人が「強い買い」として評価しており、目標株価の平均は177.19ドルと、現在の水準から50%以上の上昇余地があるとされる。しかし、短期的な市場の動揺や外部要因によるボラティリティが高い状況では、評価の妥当性を見極める冷静な分析が求められる。企業の成長性と市場の期待が必ずしも一致しない現況は、投資判断の難しさを如実に物語っている。
Source:Barchart