NVIDIAは新型GPU「RTX 5060 Ti」を2025年4月16日に発売予定で、同日にレビューも解禁される見通しである。これは従来の製品と異なり、ユーザーが購入を決定する段階で客観的な評価に触れられない可能性を孕んでいる。
RTX 5060 Tiは8GBと16GBの2モデルが登場し、人気の高いXX60番台であることから、供給不足や価格高騰への不安も根強い。また、NVIDIAはパートナー企業に対し希望小売価格(MSRP)での販売を求めているが、実現性は不透明である。
このような状況下での発売戦略は、レビュー内容や供給体制次第で市場の信頼を左右することになる。過去製品と同様の需要の高さに対して、慎重な動向が求められる局面である。
RTX 5060 Tiはなぜ発売日とレビュー解禁日を同一に設定したのか

NVIDIAは、2025年4月16日にRTX 5060 Tiを発売し、同日にレビューの公開を解禁する計画を取っている。これまでのRTX 50シリーズは発表からレビュー、発売まで段階的に日程が組まれていたが、今回は異例の同日設定である。レビュー公開のタイミングとしては、販売初日と一致するため、製品を購入した後に評価を目にするという形になる。
このタイミングが選ばれた背景には、販売初動を最大化する狙いがあると見られる。特にRTX 5060 Tiは8GBおよび16GBのVRAMモデルが同時に登場し、いずれも中価格帯として注目度が高いため、発売直後の需要の集中が予想される。実際、Steamハードウェア調査における前世代のRTX 4060および3060の高いシェアが、同シリーズの人気を裏付けている。
一方、レビューを後ろ倒しにすることは、否定的評価が出るリスクの先送りとも取れる。レビューによる影響が出る前に販売数を稼ぎたいという思惑があるとすれば、NVIDIAの戦略には慎重な目を向ける必要がある。今回の同日設定は、消費者の判断を試す分水嶺となる可能性がある。
希望小売価格戦略は市場を安定させるのか
RTX 5060 Tiの発売にあたり、NVIDIAはパートナー各社に対し、少なくとも1製品を希望小売価格(MSRP)で提供するよう求めている。これにより、初期段階での価格高騰を抑え、ユーザーへの公平なアクセスを確保する意図が読み取れる。とりわけ、コストパフォーマンスを重視する自作PC市場においては、この要請は歓迎されるべき姿勢である。
しかしながら、MSRPでの提供が現実にどれほど維持されるかは不透明である。過去にも安価なGPUは品薄となり、短期間で価格が吊り上がる傾向が顕著であった。今回も、限定的な数量がMSRPで販売された後、すぐに市場はプレミアム価格に移行する可能性が高い。NVIDIA自身も、初期以降の価格設定についてはパートナーの自由裁量に任せる方針を示している。
こうした一連の動きは、市場原理と企業戦略の狭間で揺れる価格安定策の難しさを映し出している。表面的な公平性と、実際の入手難易度との乖離がどの程度広がるかが、今回のローンチの成否を左右する要因となる。需給バランスを巡る動向には、今後も注視が必要である。
Source:Windows Central