Microsoftは2025年3月、特定のオーディオドライバに起因する互換性問題のため、Windows 11 バージョン24H2の配信を一部デバイスで停止した。影響を受けたのは、cridspapo.dllを使用するDirac Audio搭載システムで、アップデート後に音声出力が正常に動作しない事例が確認された。
問題の発生を受け、Microsoftは対象デバイスに対して「保護的なブロック措置(safeguard hold)」を発動し、Windows Update経由での24H2の提供を一時的に制限。これは、同社が数日前に別件でのブロックを解除した直後の対応である。
現在、Microsoftは原因の特定と修正に向けてハードウェアパートナーと連携中。今後、修正が完了次第、段階的にブロックは解除される予定であり、対象ユーザーには公式情報の確認が呼びかけられている。
音声不具合の原因はcridspapo.dll Dirac Audio搭載機種で発生した症状と制限措置の全容

今回の配信停止は、cridspapo.dllを用いたDirac Audioを搭載するデバイスに限定された問題であり、Windows 11 バージョン24H2の更新後にオーディオ出力が正常に作動しないという不具合が確認されている。ユーザーからは、スピーカーやヘッドホンを認識しない、または音が出ないといった報告が寄せられており、特定のオーディオドライバとの互換性が根本的な原因とみられている。
この事態を受けてMicrosoftは、24H2の配信対象から当該デバイスを除外する「保護的なブロック措置(safeguard hold)」を講じた。これにより、該当するシステムにはWindows Update経由で新バージョンが提供されない状態となっている。なお、これは3月下旬にAsphalt 8関連の制限を解除したばかりのタイミングで発生しており、立て続けに判明した技術的課題への対応となった。
今回のブロックは予防的措置としての性格が強く、Microsoftはすでに原因の調査と修正の開発に着手。ハードウェアパートナーとの協力体制のもと、安定性を損なわない修正版の提供を目指している。
安定性優先の判断とアップデート戦略の背景 Windows 11運用の難しさが浮き彫りに
Microsoftが配信停止という強硬策を講じたのは、単に不具合を回避するというだけでなく、システム全体の安定性と利用者体験を優先するという方針の表れといえる。特にオーディオ関連の障害は、一般利用者だけでなく業務用途においても影響が大きく、アップデートを強行するよりも、制限を設けたほうがリスクを抑制できると判断された。
Windows 11 バージョン24H2は、長期的な展開計画の一環として準備が進められていたが、今回の事案は、ソフトウェアとハードウェア間の調整が依然として複雑であることを示している。特にDirac Audioのような高音質処理を前提とした構成では、一般的なドライバ検証を超える多層的な検査が求められ、些細な変更でも重大な不具合を引き起こしかねない。
今後、Microsoftは不具合発生時の柔軟な対応力と、事前検証の精度を一層求められることになる。また、配信ブロックの判断が続けば、エンドユーザー側にも最新機能の利用遅延という副作用が生じ、ソフトウェア更新の受容性に影響する可能性もある。安定性と進化の両立という課題が、今回の事例で改めて突きつけられた。
Source:MSPoweruser