AMDのリサ・スーCEOが、モバイル向けRyzen AI Max APU「Strix Halo」をデスクトップPCへ展開する可能性を示唆した。統合GPUながら、PS5の処理能力を上回るスペックを持ち、一部ベンチマークではNvidia GeForce RTX 4060すら凌駕するという。

現行のAM5ソケットとは互換性がなく、巨大なチップサイズも課題だが、ミニゲーミングPC市場に特化した展開が濃厚とされる。実際、FrameworkやSixunitedといった企業が2025年に対応製品を投入予定であり、AI機能と描画性能の両立を狙う新潮流の到来が近づいている。

正式な製品発表は未定だが、Strix Haloの持つ潜在能力は、グラフィックカード依存の構図に変革をもたらす可能性を秘めている。

Ryzen AI MaxがもたらすAPU性能の跳躍とデスクトップ展開の現実性

「Strix Halo」の名で知られるRyzen AI Maxは、統合GPUを搭載しながらも、専用グラフィックカードを不要とする高い描画性能を備えている。

搭載されるGPUはPS5を上回るストリームプロセッサ数を誇り、AMDの最新アーキテクチャが組み合わさることで、モバイルAPUとしては異例の処理能力を実現している。この高性能をデスクトップへ移行させる構想は、AMDのCEOリサ・スー博士自身が「長年望んでいた製品」と語るなど、戦略的な布石といえる。

とはいえ、Ryzen AI MaxはFP11ソケットを使用し、AM5対応の現行マザーボードとは互換性がない。また、物理サイズが従来のデスクトップCPUよりも大きく、ケースや冷却システムの設計を見直す必要がある。

これらの制約により、フルタワー型デスクトップへの展開には高いハードルが存在するが、ミニゲーミングPCの分野では早期実用化が進んでいる。Framework社やSixunitedが2025年に対応製品の発売を計画していることは、その兆候といえる。

デスクトップ向けAPUがグラフィックカードに頼らない時代の端緒となるかは未知数だが、モバイルとデスクトップの垣根を越える設計思想は、次世代PC市場の再編を促す契機となる可能性がある。

専用GPU不要の性能が意味するPC構成の再定義と市場への影響

Ryzen AI Maxの性能が確かなら、従来の「CPU+GPU」という分離構成に対し、新たな統合型PC構成の可能性が浮上する。

従来、PCゲーマーやクリエイターにとっては高性能GPUが不可欠とされてきたが、統合GPUがRTX 4060を一部ベンチマークで超えるとなれば、コストとスペースの最適化において劇的な進化といえる。この変化は、特に小型筐体での高性能を求めるニーズと一致し、ミニPCや据え置き型エンタメ端末の設計思想を根底から覆す可能性がある。

一方で、Ryzen AI Maxの価格帯や消費電力、そして実環境での安定性は依然として不透明であり、単純な代替にはなり得ない。また、AM5との非互換やフォームファクターの問題は、一般的な自作PC市場への浸透を阻む要因となる可能性も高い。したがって、これはGPU市場そのものにとっての脅威というよりは、特定用途に特化したセグメントへの新たな提案と捉えるのが現実的である。

このアプローチが標準化すれば、ユーザーのPC構成選定における価値判断軸が大きく揺らぐ。CPU単体でグラフィック処理を賄える設計が普及すれば、デバイス開発だけでなく、部品調達やサポート体制にも広範な影響を与えることが考えられる。

Source:PCGamesN