ASUSは、自社ウェブサイト上で新型マザーボード「TUF Gaming B850-BTF WiFi W」を公開した。AMDの800シリーズとしては初のBTF(Back-To-the-Future)設計を採用し、全コネクタを背面に配置した完全ホワイト仕様となっている。最大の特徴は、同社のBTFシリーズGPU専用に設計された最大600W対応のGPUスロットであり、未発表のGeForce RTX 5090 BTFとの互換性を想定している点である。

このスロットは、前面の12ピン電源を不要とし、背面の「12V-2×6コネクタ」から電力を供給する仕組みを採用。その他のインターフェースも背面に統合され、ケーブル類を完全に隠せる構造を実現している。また、80A DrMOSによる14+2+1フェーズVRM、最大8000 MT/sメモリ対応といったハイエンド仕様も備えており、Ryzen 9000シリーズとの組み合わせで真価を発揮する構成となっている。

発売日や価格は未定だが、今後のX870シリーズと合わせて市場投入が進む見通しである。

最大600W供給を実現する専用GPUスロットの構造と制約

「TUF Gaming B850-BTF WiFi W」の最大の特徴は、従来の12ピンケーブルを用いず、背面の12V-2×6コネクタから前面GPUスロットへ最大600Wの電力供給を実現する点にある。

この仕様により、GeForce RTX 5090 BTFのような次世代ハイエンドGPUにも対応可能とされ、見た目の整然さと電力供給性能の両立が図られている。ただし、このスロットはASUS製BTFグラフィックスカードにのみ対応しており、既存のGPUとの互換性は排除されている。

本モデルは、既存のBTFコンセプトのAMDプラットフォームへの初展開であり、TUFブランドにおける設計思想が色濃く反映された仕様である。

すべてのコネクタを背面に集約することで、配線の可視性を限りなく抑えた構成が可能となり、組み立て後の外観品質も一段と向上する。しかし、裏面配線を前提としたPCケースとの互換性が必須となる点は導入時の課題となる。今後この設計が他社や自作市場全体に拡がるかどうかは、対応パーツの普及スピードに依存すると言える。

BTF設計が象徴する次世代自作PCへの価値観の変化

従来の自作PC市場では、性能と冷却性が設計の中心であったが、ASUSのBTFプロジェクトが推進する裏配線設計は、「見せる美しさ」から「見せない美しさ」へと価値基準を転換させつつある。

特に「TUF Gaming B850-BTF WiFi W」のように、全ポートを背面に移す構造は、内部空間をすっきり保ちたいユーザーの需要と合致しており、見た目の簡潔さが冷却効率やメンテナンス性にも波及することが期待されている。

一方で、こうした設計はコネクタ位置の変更に加えて、専用電源やグラフィックスカードなどのパーツとの組み合わせが必須となる点で、標準化には高い障壁が存在する。

特に、RTX 4090 BTFの前例を踏まえると、今後登場が見込まれるRTX 5090 BTFも限定的な販売チャネルや高価格帯に位置づけられる可能性が高く、大衆向けというよりは選ばれた市場への提案となりそうである。BTF設計は革新的であると同時に、部品構成の自由度を制限するというトレードオフを内包している点にも留意が必要である。

Source:Wccftech