2024年、中国のEV大手BYDは売上と納車台数でテスラに迫り、グローバル市場の主導権を巡る構図が変わりつつある。売上高は1,070億ドルに達し、納車台数ではハイブリッド車を含め4,270万台と前年比41%増を記録。新型急速充電技術「Super e-Platform」や価格競争力の高いセダン「Qin L」の投入により、消費者の支持も盤石となった。

一方、テスラ株は年初来で32%下落し、販売不振や政治的リスクが影を落とす。中国・欧州でのシェアは急減し、エネルギー事業や自動運転開発による長期的成長期待とのギャップが鮮明だ。ウォール街の評価は分かれており、今後の動向は2025年第1四半期の納車実績が一つの分岐点となる可能性がある。


BYDの技術革新と販売力がもたらす構造的転換

2024年のBYDは、売上高が前年比29%増の7,770億元(約1,070億ドル)に到達し、納車台数ではテスラと肩を並べるまでに成長した。ハイブリッド車を含めた総納車台数は4,270万台で、前年比41%増という圧倒的な拡大を見せている。中国本土においては、政府による補助金政策と急速な消費者需要の高まりを背景に、テスラを上回る販売台数を記録したほか、急速充電技術「Super e-Platform」を発表し、最大1,000kWの充電に対応する新世代EVの展開を目前に控えている。

こうした動きは、製品性能と価格競争力の両面で優位性を築いた結果である。新型セダン「Qin L」は、545kmの航続距離と自動運転機能「神の目」を搭載しながら価格は約1.6万ドルと、テスラのモデル3の半額に抑えられている。これにより、BYDはミドルクラス市場を確実に攻略しつつあり、欧州・東南アジア市場にも進出する体制を整えた。EV市場における主導権争いは、単なる納車台数やシェアだけでなく、技術・価格・インフラを含めた総合戦であり、BYDがその複数の分野で優位に立ちつつある現実は見過ごせない。

テスラの多角化戦略が示す中長期の布石と課題

テスラは2025年に入り、株価が32%下落しS&P500構成銘柄中でも下位に沈んだ。背景には中国および欧州での販売不振があり、中国市場ではシェアが2020年の16%から2024年には4.3%に低下した。こうした短期的な困難を受け、投資家の一部は不安定な自動車部門のみに目を向けがちだが、同社はエネルギー貯蔵やロボティクス、自動運転など複数の新規事業に注力している。特に、蓄電システム事業は前年同期比で113%の売上増、導入量は244%増と急拡大しており、上海メガファクトリーの稼働によりさらなる成長が見込まれている。

また、「Optimus」と名付けられた人型ロボットは、労働集約型産業への投入を見据えた長期計画の一環であり、マスクCEOは同プロジェクトが将来的に10兆ドル規模の市場を形成し得ると述べている。ただし、現時点でこれら新領域が本業の収益悪化を補うには至っておらず、株価の高いPER水準(非GAAPで107.78倍)と合わせて評価には慎重さが求められる。成長を続けるエネルギー分野と、自動車部門の再建に向けた新型EVの投入、さらに完全自動運転(FSD)の実用化が、テスラの再評価の鍵となる可能性はあるが、目先の成長には不確実性が伴う。

Source:Barchart