AI半導体の世界的リーダーであるNvidiaの株価が下落している。年初来高値からの下落幅は25%を超え、中国市場での規制強化と米国による新たな輸出制限が主因である。中国政府は国内企業に対し、Nvidia製チップの使用を制限するよう助言しており、背景には省エネ基準違反の疑いがある。加えて、トランプ前政権時代に起因する制裁措置の延長で、50社以上の中国企業がブラックリスト入りし、Nvidiaの販路がさらに狭まった。
こうした状況を受け、短期的な株価の不安定さは避けられないが、AI革命の中核を担う同社の将来性には一定の期待が残る。元ヘッジファンドマネージャーのジム・クレイマー氏も、長期視点ではNvidiaの成長余地を強調している。アナリストの平均目標株価は177ドルと、現水準から55%以上の上昇を見込んでいる。
中国政府の規制と米国の制裁が同時に直撃したNvidiaの販売戦略

Nvidiaは現在、中国と米国双方からの圧力を受けている。中国政府は国内企業に対して、Nvidia製チップの使用を控えるよう助言を出しており、これは省エネ基準違反を名目とした事実上の排除策である。同時に、米国ではトランプ政権下で策定された制裁リストに、今週新たに50社以上の中国企業が追加された。これにより、Nvidiaがこれら企業と直接取引を行うことはほぼ不可能となった。
このような二重の規制環境により、Nvidiaの中国市場における販売網は大きく制限される可能性が高い。特にAI関連半導体の多くが同国企業に供給されていた現状を踏まえると、売上の一部が恒常的に減少するリスクは看過できない。事実、株価はすでに年初来高値から25%以上の下落を見せており、市場はこのリスクを織り込み始めている。短期的には更なる悪材料の浮上も想定されるため、地政学的リスクに対する企業の対応力が問われる局面である。
テクニカル指標とファンダメンタルズが示すNvidia株の二面性
Nvidia株は短期的なテクニカル指標上では弱気相場入りの兆しを見せている。具体的には、50日移動平均線が200日移動平均線を下回る「デスクロス」が発生し、これは一般的に中期的な下落トレンドのシグナルとされる。一方で、同社は2024年2月期の売上予想を430億ドルとし、前年同期比で65%の成長を見込んでいる。この売上見通しが現実のものとなれば、AI成長鈍化への懸念は過度であった可能性が高い。
このように、株価チャートと企業業績は相反するシグナルを市場に発信している。市場が短期の価格変動に過敏に反応する一方で、根本的な企業価値は依然として上昇基調にあると見る向きもある。元ヘッジファンドマネージャーのジム・クレイマー氏も、短期的な混乱を警告しつつ、AI革命におけるNvidiaの中核的役割には変わりがないと述べている。短期の調整局面と長期的な成長期待が交錯する中で、時間軸によって評価が大きく分かれる典型的な局面にある。
Source: Barchart