ドナルド・トランプ前大統領が全輸入車に25%の関税を課す方針を打ち出したことを受け、ゼネラル・モーターズ(GM)の株価は前日比7.1%安、フォードは2.6%安と急落した。
フォードは米国内生産比率が約80%と高い一方、GMは55%にとどまるため、関税の影響をより強く受けるとの見方がある。アナリストは、関税が自動車各社の利益を実質的に相殺し得ると指摘しており、製造コストの上昇は価格転嫁を通じて需要の減退につながる可能性が高い。
加えて、フォードは第1四半期の利益が前年同期比で半減以上になると予測され、GMも利益成長が0.38%にとどまる見込み。いずれも投資妙味に乏しい局面に直面している。
GMとフォードに及ぶ関税の構造的影響

ドナルド・トランプ前大統領が打ち出した全輸入車への25%関税は、米国自動車市場において明確な格差を浮き彫りにしている。フォードは販売車両の約80%を米国内で生産しているのに対し、ゼネラル・モーターズ(GM)は国内生産比率が55%程度にとどまり、海外依存度の高さが短期的な株価急落に直結した。
この関税は単なるコスト増加にとどまらず、利益構造の根幹に及ぶ打撃となる。UBSのジョセフ・スパック氏が指摘する通り、「デトロイトのビッグ3」にとって収益が帳消しになり得るほどの影響が懸念されている。特にGMのような国際生産体制に依存する企業にとっては、関税のコスト転嫁が難しく、価格競争力の低下を招く恐れがある。
また、米国内に生産を回帰させる戦略も、高騰する人件費により現実的な解ではない。アメリカの製造労働者の時給は約30ドルであるのに対し、メキシコでは3ドルと約10倍の差がある。製造コストの急上昇は、販売価格に跳ね返り、結果として消費者需要の鈍化に繋がる公算が高い。
業績見通しの悪化が映す自動車業界の構造不安
トランプ氏の関税構想は引き金に過ぎず、フォードおよびGMの業績見通しにはすでに構造的な逆風が織り込まれつつある。フォードは2025年3月期第1四半期において100%以上の減益が予想されており、GMも同期間の利益成長がわずか0.38%にとどまるとの見通しが示された。これらの数値は、単発的な外的要因ではなく、根本的な収益力の鈍化を物語っている。
とりわけ注目すべきは、原価高騰と販売価格上昇による需給のねじれである。価格転嫁が進めば、需要はさらに冷え込み、販売台数の減少が次なる業績悪化の引き金となる。こうした悪循環により、両社は競争力の維持と利益確保の板挟みに置かれている。
さらに、EVへの移行やサプライチェーンの見直しといった中長期的課題も並行して進行しており、現在の関税ショックはその対応力を試す試金石とも言える。短期的な押し目買いを狙うには不確実性が大きく、長期的な視点での企業体質強化が問われる局面である。
Source: Barchart