ドナルド・トランプ前大統領が4月3日発効予定の25%自動車関税を発表し、米国外で製造される全車両に適用されるこの政策は、世界の市場に激震をもたらした。特に米ゼネラル・モーターズ(GM)は、株価が1週間で8.71%、年初来で10.76%下落するなど深刻な打撃を受けた。
GMは国内に工場を持つ一方で、国際的なサプライチェーンへの依存が高く、部品が最大8回国境を越える現実が新関税によるコスト増を直撃している。フォードなど他の大手も株価下落に見舞われる中、米国内製造に集中するテスラは株価上昇で唯一の勝者として浮上したが、影響が限定的で済む保証はない。今回の混乱は序章に過ぎず、今後の市場動向と報復関税の行方に注視が必要である。
GM株急落の背景にあるグローバル供給網の構造的脆弱性

ゼネラル・モーターズ(GM)は、米国内に製造拠点を数多く保有しながらも、グローバルな部品供給に大きく依存している。組み立て工程に使用されるパーツは最大で8回も国境を越えるとされ、その輸送過程すべてが新たな関税の影響を受ける見通しとなった。3月27日時点でGM株は47.51ドルにまで下落し、1週間で8.71%、年初来では10.76%の下落を記録しており、同社の供給網の国際化が逆風となったことは明白である。
こうした構造は、効率とコスト最適化を重視して形成されたが、今回のような関税政策の急変には極めて脆弱である。特に米国における製造が最終工程である一方、その多くが海外で生産された部品に依存している点がリスクとして顕在化した。これによりGMは自社の国際戦略を抜本的に見直す必要性に迫られる可能性がある。短期的な株価下落はその序章に過ぎず、長期的には企業体質そのものへの影響が問われることとなろう。
テスラ株上昇の真因と、その脆さに潜む懸念
3月27日の取引でテスラ(NASDAQ: TSLA)の株価は279ドルに上昇し、前日比2.5%、7日間では15.48%のプラスを記録した。上昇の背景には、全車両を米国内で製造するという同社の特異な生産体制がある。他の自動車メーカーが国境をまたいだ複雑なサプライチェーンを持つのに対し、テスラは政策変更に対する短期的な耐性が高いと見なされたことが投資家心理を支えた。
しかし、テスラが完全に関税の影響を回避できると断ずることはできない。同社が使用する車両部品の最大3分の1が輸入品である可能性が指摘されており、今後の関税拡大や部品調達の制約が業績に波及する懸念は残る。また、市場が示した反応が実体以上に楽観的であった場合、反動による株価の調整リスクも無視できない。今回の株価上昇は、安定した成長基盤の表れではなく、一時的な逃避先としての性質が色濃い。
Source: Finbold