中国EV大手NIO(NYSE: NIO)の株価は、3月11日に補助金発表を受け年初来高値の5.22ドルを記録したものの、第4四半期決算の失望から一転、3月27日には3.93ドルまで下落し24.71%の値を失った。
この急落局面で注目されるのが空売り比率の動向である。決算発表時の41.18から、67.71まで急騰し、実際の市場ではアナリストの「ホールド」評価とは裏腹に弱気姿勢が鮮明となっている。
背景には、新株最大1億1,880万株発行による希薄化リスクや、販売成長が利益に直結していない財務構造への懸念がある。加えて、米中摩擦の再燃や不透明なマクロ環境も、投資家の慎重姿勢を後押ししている。
空売り比率67.71への急騰が示す市場の不安心理

NIOの空売り比率は、3月21日の決算発表直後の41.18から27日には67.71まで跳ね上がった。Fintelの分析データによれば、この急上昇は短期間における極めて異例の動きであり、株価の先行きに対する市場の不安感が顕著に現れている。
空売りは下落を見越した取引行動であり、この比率の急騰は単なる一時的な調整ではなく、投資家の強い警戒感を反映したものと読み取れる。特に3月11日に記録した年初来高値の5.22ドルから3月27日には3.93ドルへと24.71%下落していることから、投機的な動きというよりも、構造的な不透明感が背景にあると見られる。
NIOが発表した第4四半期の業績では、1株当たり利益(EPS)と売上高がいずれも市場予想を下回り、通期見通しにも弱気なトーンがにじんだ。この内容が投資家のセンチメントを一気に冷やしたと考えられる。加えて、マクロ経済環境の先行き不透明さや米中関係の緊張再燃といった外的要因も、株価への下押し圧力を強めている可能性がある。ただし、アナリスト評価が依然として「ホールド」にとどまり、12か月後の目標株価が現水準より16.35%高い水準とされている点からは、短期的な売りの勢いと長期的な評価のギャップが浮き彫りとなっている。
新株発行の意図と希薄化リスクが投資家心理に与える影響
NIOは3月27日、米国外において最大1億1,880万株の新株発行を提案しており、発行済株式数19.4億株に対して約5.77%の希薄化が生じる可能性があるとされる。この発表は、株式価値の希薄化を懸念する市場にとって明確な売り材料となり、空売り比率の上昇とも連動している。資金調達の目的は研究開発への投資であると説明されているが、短期的には利益貢献が見込まれにくい分野であり、目先の業績への反映を期待しにくい点が慎重な姿勢を助長している。
一方で、研究開発はEV産業の競争力を左右する要素であり、長期的には収益構造の強化につながる可能性がある。販売台数が前年同期比で伸びているにもかかわらず、収益に結びついていない現状を打破するには、技術革新を通じた製品差別化が不可欠となるだろう。ただし、その果実を得るには時間を要し、短期投資家にとっては依然として不確実性が支配的な状況である。今回の新株発行は、企業の成長戦略の一環として評価できる要素を含むものの、株式の希薄化という事実が当面の間、市場心理に陰を落とし続ける構図に変化はない。
Source:Finbold