GoogleはPixelシリーズ向けに新たな性能改善アップデートを提供し、Pixel 9 Pro XLの熱による性能低下(サーマルスロットリング)を大きく抑制した。写真編集アプリで11%の処理速度向上も確認される一方、高負荷ゲームや動画編集などでは改善効果が限定的で、アップデート後に性能が低下したケースもある。

特にPixel 7 ProではRARLABのファイル圧縮テストでPixel 9 Pro XLを17%上回る結果が出るなど、Tensor G2とG4の間で期待された性能差が見られない場面もあった。Geekbenchスコアなど合成ベンチマークの向上に対して、現実的な使用状況では評価が分かれる内容となっている。

高負荷アプリで明らかになったPixel 9 Pro XLの限界と改善点

Pixel 9 Pro XLに対する新アップデートでは、全体的な処理速度向上は見られるものの、実際のアプリ動作では一貫性に欠ける結果となった。たとえば高負荷なモバイルゲーム「Wilderless」では、アップデート後も最高画質で40FPS前後のパフォーマンスにとどまり、Snapdragon 8 Gen 3を搭載するXiaomi 15 Ultraの滑らかな描画には遠く及ばない。Tensor G4のグラフィックス処理能力における限界が如実に表れた場面である。

一方で、ファイル圧縮ベンチマークやGoogleフォトの動画編集など、負荷が比較的限定的な用途では一定の性能向上が見られた。Pixel 9 Pro XLは、3分の動画を2分にカットして保存する作業で11%の速度改善を示し、RARLABのテストでも未更新版に比べ11%の高速化が確認されている。Juan Bagnell氏による一括写真処理テストでは、スロットリングの発生率が19%から7%へと大幅に改善され、熱処理面での進化が裏付けられた。

用途によって性能の恩恵に差が出る点は注意が必要だが、熱による処理落ちが減ったことで、従来よりも長時間の安定した使用が可能となっている。ただし、ピーク性能の面では未だ他社フラッグシップとの差が大きく、万能なアップデートとは言いがたい。

Pixel 7 Proが示したTensor G2の底力とアップデートの波紋

意外性のある結果が出たのはPixel 7 Proである。アップデートにより性能が向上するどころか、一部ベンチマークでは処理速度が低下するという現象が観測された。LumaFusionでの動画レンダリングでは、未更新のPixel 7 Proに比べ、更新後のモデルは7%も処理時間が長くなっている。アップデートによる最適化の影響が、すべてのアプリで好結果をもたらすとは限らない点が浮き彫りとなった。

しかし、RARLABの圧縮テストでは予想外の展開があった。Pixel 7 Proが、最新のPixel 9 Pro XLを17%上回る速度を記録。加えて、PhotoMate R3を用いた熱の影響評価では、スロットリングが9%から3%に減少し、安定性は向上している。Tensor G2がTensor G4と肩を並べる場面も多く、世代間の実効性能差が小さい可能性を示唆している。

これらの結果からは、Googleのアップデートが新旧モデルで異なる効果をもたらしていることが読み取れる。ハードウェア性能の向上よりも、熱処理や安定性に軸足を置いた最適化の意図が感じられ、今後のアップデートではさらに精度の高い調整が求められる局面に入っている。

ベンチマークだけでは見えない“使い勝手”の変化に注目

今回のアップデートによって、Pixel 9 Pro XLおよびPixel 7 Proの処理性能が一部向上したことは確かだが、それ以上に注目すべきはスロットリングの抑制による体感面での変化である。特に、長時間の写真編集やファイル圧縮といった処理での安定性が改善されたことで、途中で処理速度が落ちるといった従来の課題が軽減された。これにより、パフォーマンスのブレが少ない操作感が期待できる。

一方で、ゲームや動画編集など、ピーク性能を求められる状況では依然として限界が存在する。合成ベンチマークでは改善が見られても、現実的な使用環境ではその恩恵を実感しづらい場面もあり、アップデートの効果は一様ではない。また、旧機種での性能低下が見られた点は、今後の更新方針に影響を及ぼす可能性がある。

処理能力の数字に一喜一憂するよりも、発熱を抑えて安定した動作を維持する方向性は、長時間使用するユーザーにとって実用性が高い選択とも言える。Googleが掲げる「効率性重視」の姿勢は、単なる性能競争とは異なる価値を模索していることを物語っている。

Source:NotebookCheck