GoogleがPixel 9シリーズ向けに提供する画像生成ツール「Pixel Studio」が、3月のPixel Dropでついに人物生成機能に対応した。従来は知的財産保護の観点から制限されていたが、今回のアップデートにより、AppleのImage PlaygroundやSamsungのDrawing Assistと肩を並べる存在となった。
ただし、生成可能な人物は「特定の一般的な人々」に限られ、家族や友人、著名人の画像は依然として非対応のまま。とはいえ、スタイルの選択肢は大幅に増加し、浮世絵やクレイアニメ風など計17種類へ拡充された点は他社よりも強みとなる。
表現力を広げたPixel Studio 17種類のアートスタイルが生む創造性の余地

Pixel Studioが3月のアップデートで大きく進化したのは、人物生成の解禁だけではない。最大の変化は、アートスタイルが従来の7種類から17種類へと大幅に拡充された点である。追加されたスタイルには、クレイアニメ風、水彩画、浮世絵、ステンドグラス風といった個性豊かなものが並び、画像生成における表現の幅を飛躍的に押し広げた。
AppleのImage PlaygroundやSamsungのDrawing Assistでは、スタイルの自由度は一定の範囲にとどまっており、特にSamsungにおいてはスタイル選択そのものが限定的である。これに対し、Pixel Studioでは課題に応じてスタイルを使い分けることで、結果の印象を自在に変化させられるのが魅力だ。たとえば「ラーメンのプールで泳ぐ男性」という非現実的な依頼に対して、ステンドグラス風を選ぶことで宗教画のような荘厳さすら演出している。
ただし、このスタイルの多様性はあくまでアート的な価値を追求する場面で効果を発揮する。現実に近いビジュアルを求める場合、細部の描写や人物の表情といった部分で精度のバラつきが見られ、Samsungのような再現性重視の生成には及ばない印象もある。スタイルの選択肢が多いこと自体は評価されるべきだが、それをどう使いこなすかは利用者の工夫次第となるだろう。
知人や自分の顔を使えないPixel Studio 自由度の壁はまだ厚い
人物生成に対応したとはいえ、Pixel Studioでは自分や知っている人の顔を画像に登場させることはできない。この仕様はGoogleのコンテンツガイドラインに基づく制限であり、著名人や個人の肖像権に関わる要素も厳しく制御されている。AppleやSamsungがカメラロールの写真をベースに画像を生成できるのとは対照的で、自由な人物表現にはまだ遠い状況である。
たとえば「自分がサッカーの試合で応援している姿」を描くという課題においても、Pixel Studioでは髪型など一部の特徴を再現できたものの、自分の顔を使った描写は実現できなかった。これに対してSamsungは、顔の特徴をある程度忠実に再現し、スタジアム背景との組み合わせも成立していた。Appleは描写に一部違和感があったものの、野球帽などのアクセサリ追加には柔軟性があった。
人物生成が可能になったとはいえ、それが誰を描けるかという点では大きな制限が残っている。現時点のPixel Studioでは、知人との記念写真や、自分自身を主役にした創作には向いていない。一方で、空想上のキャラクターや架空の人物をベースとしたアートを生成する用途では十分な表現力を持っている。用途によって得意不得意が明確に分かれるため、生成したい画像の方向性を見極めることが重要だ。
複数人のシーンを再現できたのはPixel Studioのみ 集合描写に強みあり
「岩登りをする複数人のグループ」という比較的複雑な課題に対して、唯一Pixel Studioだけが「複数人」をきちんと描いたという結果は注目に値する。他のプラットフォームでは人物数が不足したり、再現度に難があったりと、対応力の限界が見られた中で、Pixel Studioは制限内であっても依頼に対して正面から応えた形となった。
このタスクではConstruction Paperというスタイルが選ばれたが、これは子どもの工作のような仕上がりになるユニークなアートスタイルで、シーン全体に親しみやすさを与えている。人物の表情や体のバランスには粗さもあるが、「複数人の登場」「状況の把握」「動作の再現」といった要素を一枚の画像に収められたのはPixel Studioだけだった。
ただし、これは一概に再現力の高さを意味するものではない。他のプラットフォームも繰り返しの生成やパラメータの調整によって精度を上げる余地があるため、現段階では「対応できた事実」以上の優位性を見出すのは難しい。それでも、こうした複数人描写への対応力はPixel Studioの一つの強みとして今後の進化に期待を持たせる。単体人物にとどまらず、複雑なシーンを構築する場面での活用が広がる可能性はある。
Source:Android Authority