Microsoftが提供するAI搭載のセキュリティ支援ツール「Microsoft Security Copilot」が、Windows 11向けに本格的な導入手順と設定方法を公開した。Defender XDRやSentinelなどの既存サービスと統合され、AzureサブスクリプションとSCU(Security Compute Units)による時間単位の課金モデルを採用しているのが特徴。

このCopilotは、脅威分析やインシデント対応、インテリジェンス収集を自然言語で支援する仕組みを持ち、Red CanaryやJamfといった他社ツールとの連携も可能。導入には最小システム要件を満たしたうえでAzureポータルまたはCopilot専用ポータルから容量をプロビジョニングし、専用ロールによる構成が必要とされる。

AzureサブスクリプションとSCUの仕組みを理解する

Microsoft Security Copilotを導入するには、Azureサブスクリプションの取得とSecurity Compute Units(SCU)の確保が必須となる。SCUは時間単位でプロビジョニングされ、利用者は使用した時間とユニット数に応じて課金される仕組みで、秒単位ではなく「1時間」という明確な単位で計算される点が重要だ。プロビジョニングはSecurity Copilot専用ポータル、またはAzureポータルのどちらからでも行うことができる。

容量の割り当ては、使用開始時に行うのが推奨されており、時間の途中で変更すると不要なコストが発生するリスクがある。SCUの指定には、評価場所(リージョン)やデータ保存先の選択も含まれ、自身のテナントのジオに合わせた設定が求められる。サブスクリプションの取得時には、こうしたリソース設計の理解が不可欠となる。

この時間単位の課金モデルは、短期間のテスト導入や実験的な活用にも適しており、必要な分だけを柔軟に導入する形を可能にする。一方で、利用状況を綿密に把握しなければ予期せぬ請求が発生するおそれもあるため、初期設定と使用タイミングのコントロールが極めて重要となる。

セキュリティ環境構築に求められる高度な設定プロセス

Microsoft Security Copilotの導入後は、容量のプロビジョニングに加えて、セキュリティ管理者レベルのロールを用いた高度な構成作業が必要となる。具体的には、データ保存場所の確認からMicrosoft 365との連携、ユーザーとシステムのログ取得の有無、共有設定、アクセスロールの定義に至るまで、多段階にわたる構成フローが用意されている。

このプロセスを完了するには、Azureのリソース権限を持つ「所有者」や「容量リソースのコントリビューター」であることが前提条件で、一般的な管理者アカウントでは操作できない部分も存在する。複数の確認と設定ステップを経ることで、情報漏洩の防止や権限誤設定によるリスクを最小限に抑える設計になっている。

こうした複雑な手順は、導入時に手間がかかると感じる場面もあるが、それ以上に「誰が・どの情報に・どこからアクセスするか」を明確に管理できる点で大きな意義がある。特に複数のクラウドサービスを併用している環境では、この構成が後のセキュリティトラブルを防ぐ要の仕組みとなる。

AIによる自然言語サポートがもたらす日常業務の変化

Security Copilotの大きな特長は、自然言語で操作や分析が可能な点にある。従来のセキュリティツールではスクリプトや専門知識が求められる場面も多かったが、このツールは「このアラートの原因は何か」「どの端末が関与しているか」といった質問を入力するだけで、即座にインサイトやアクションが提案される。

この機能はMicrosoft Defender XDRやSentinel、Intune、Entraなどと連携し、それぞれのサービスにまたがる情報を横断的に解析できるよう設計されている。また、Red CanaryやJamfといった外部ベンダーの製品とも連携可能であり、ツール間のデータの壁を取り払う動きも加速している。

専門的な知識がなくてもある程度の初動が可能になるという点で、管理者の負担軽減に直結する効果が期待される。ただし、AIの出力結果は最終判断ではなく「補助的な意見」として扱う意識が必要であり、すべてを鵜呑みにせず人間側でのレビューを挟む運用が前提となるだろう。

Source:The Windows Club