2025年3月26日、GameStopは財務準備資産としてビットコインを保有する方針を公表し、株価は一時12%上昇した。しかしビットコイン市場はこれに反応せず、価格はむしろ下落したまま推移した。その背景には、購入予定額の不明瞭さや市場規模との乖離がある。
13億ドルの転換社債発行も用途が限定されておらず、投資家の期待を刺激するには至らなかった。専門家らは、企業のビットコイン導入が市場に与える影響はすでに限定的であり、今後の価格変動を動かすのは国家戦略的な保有であると指摘する。
資金用途の不明確さと市場規模が招いた無風の反応

GameStopは3月26日に財務方針を更新し、ビットコインを準備資産として保有すると発表した。これに先立ち、同社は13億ドルの無利子転換社債の発行を公表していたが、その資金の用途については「一般企業目的」とされ、具体的なBTC購入額は明記されていない。この不透明さが市場の懐疑心を招き、ビットコイン価格に影響を及ぼすには至らなかった。
加えて、GameStopの保有現金は約48億ドルとされるが、仮に全額をビットコインに投じたとしても、日次のオンチェーン取引量(約140億ドル)に比して限定的であり、価格形成には寄与しづらい。Quantum EconomicsのCEOであるマティ・グリーンスパン氏も、企業によるBTC導入としては一歩前進としながらも、市場インパクトに乏しいと指摘している。
かつて2021年にテスラが15億ドル相当のビットコイン購入を発表した際は、BTC価格が20%超上昇した前例がある。しかし、当時と異なり、現在は市場参加者の目線がより戦略的な規模や透明性に向いており、単なる導入表明では材料不足と映る。株価の一時的上昇とは対照的に、仮想通貨市場は冷静に反応したといえるだろう。
国家戦略の潮流に埋もれる企業導入のニュース価値
かつては企業のビットコイン導入が大きな市場材料として扱われたが、現在ではそれが当然の流れとなりつつある。Bitcoin Treasuriesによれば、未公開企業によるBTC保有総量は38万BTCを超え、公開企業の約2倍に達している。こうした背景から、GameStopのような企業の参入がもはや市場を揺るがすニュースにはなりにくい状況がある。
一方、注目を集めているのは国家による戦略的なビットコイン保有である。エルサルバドルは6,000BTC超、ブータンは約10億ドル相当を保有し、いずれも自国の財政安定策の一環として暗号資産を取り込んでいる。グリーンスパン氏は、「今回のブル相場は国家主導で動いている」と述べ、企業の動向よりも国家による導入が主要なドライバーとなっている点を強調している。
さらに、CryptoQuantによるとビットコイン強気スコアは「20」にまで低下し、マクロ経済の不安要素が投資家心理を抑制している。トランプ元大統領による関税発言や景気後退懸念が背景にあり、市場全体が防御姿勢に傾いている。こうした環境下では、GameStopの発表のような個別企業の動きが埋もれるのは必然であろう。
Source:BeInCrypto