ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイは、32年保有していた米銀大手ウェルズ・ファーゴ株を2022年に全売却したが、同社は現在、画期的な回復局面を迎えている。2016年の不正口座問題を機に業績は悪化し、FRBによる資産上限規制など厳しい制約を受けたが、2019年に就任したチャールズ・シャーフCEOのもとで構造改革を実施。
規制命令も大幅に解消し、株価は売却後に50%超上昇した。バフェットの判断が誤りだったかどうかは一概に言えないが、現在のウェルズ・ファーゴは投資家に再評価されつつある。
ウェルズ・ファーゴの再生を導いたシャーフ改革の全貌

ウェルズ・ファーゴは2016年の不正口座問題によって信用を大きく失い、行政処分や巨額の罰金に直面した。さらに2018年にはFRBによって1.95兆ドルの資産上限が課され、他の大手金融機関に比べて資産拡大による収益成長が困難となった。この制限は銀行業の根幹を縛る厳しい措置であり、事実上の成長停止命令とされていた。
2019年、同社はJPモルガン・チェースやVisaで経歴を持つチャールズ・シャーフを新たなCEOに迎え、再建に着手した。シャーフは規制当局との関係修復を最優先課題とし、コンセント・オーダー(是正命令)の解消に向けて抜本的な組織改革を推進。2019年当時は12件存在していた命令は、2025年時点で3件にまで減少したと報じられている。これにより、同社は資産上限解除という最大の足かせからの解放に近づいている。
規制対応の進展に加え、非中核事業の売却やコスト構造の見直し、資産効率型ビジネスへの移行など、多角的な改革が成果を見せ始めている。これらの動きは短期的な収益性よりも、長期的な健全性と市場の信頼回復を優先する判断の結果とみられる。
バフェットの判断とその影響を巡る評価の分岐点
バークシャー・ハサウェイは1990年から2022年までの32年間にわたりウェルズ・ファーゴに出資していたが、2016年のスキャンダル以降、段階的に株式を売却し、最終的に保有を全て手放した。バフェット自身、当時の経営陣の対応や規制への反応に対して不満を抱いていたとされ、特にCEO人事に関してはウォール街出身ではない人物を望んでいたと報じられている。
しかし、その後の同社株価はバークシャーの売却以降に50%以上上昇しており、株式市場ではその判断が「早すぎた」との見方も広がっている。一方で、バフェットの長期投資スタイルからすれば、すでに十分なリターンを得たうえで、金融セクター全体へのリスク回避を図ったという解釈も可能である。実際にパンデミック以降、バークシャーは多くの大手銀行株を整理している。
2025年現在の高評価は、2016年以降の苦難と改革が実を結び始めた結果であり、当時の売却判断が誤りであったかは一面的には語れない。また、トランプ政権の再登場が金融規制の緩和を後押しする可能性もある中で、今後の展開によっては、バフェットの決断が再評価される局面も訪れるだろう。
Source:The Motley Fool