AI向けクラウド基盤を提供するCoreWeaveが3月28日、1株40ドルでナスダック上場を発表し、15億ドルを調達した。価格は当初想定の47〜55ドルを下回り、提供株数も3,750万株に抑制された。評価額は希薄化後で約230億ドルに達する見込み。

2017年に暗号資産マイニング事業として創業した同社は、Nvidia製チップに依存したAIクラウド基盤事業へと転換。最大顧客であるMicrosoftが売上の62%を占め、2023年末には80億ドルの負債を抱えていたことも判明している。

競合にはAWSやGoogle Cloudをはじめとする大手がひしめき、変化の激しい市場環境と高い財務リスクを背景に、CoreWeaveの今後の成長性には注目と慎重な見極めが求められる。

想定を下回るIPO価格と抑制された株数が示す投資家の慎重姿勢

CoreWeaveが設定した1株40ドルというIPO価格は、当初想定されていた47〜55ドルのレンジを大きく下回った。さらに、予定していた4,900万株から3,750万株へと提供株数も削減されており、投資家からの需要が当初の見込みよりも弱かった可能性がある。調達額は15億ドル、企業評価額は希薄化後で約230億ドルに達する見通しだが、価格設定と株数の両面で“防御的”な戦略が採られた点は注視すべきである。

背景には、同社の高い負債構造と事業の急成長ゆえの収益構造の不安定さがある。CoreWeaveは2023年末時点で80億ドルの負債を抱え、純現金収入の3割以上をその返済に充てていた。このような財務状況では、成長企業であってもIPO時の市場評価に影響が及ぶことは避けがたい。市場の期待感は高まっていたが、実際の資本市場の反応は冷静だったことが価格決定に如実に表れている。

また、株式はナスダックに「CRWV」のティッカーで上場されるが、直近の米国IPO市場は選別的な傾向が強まっており、急成長企業に対しても財務健全性を重視する姿勢が顕著になっている。CoreWeaveの価格設定と株数の減少は、こうした市場心理の反映と捉えるべきであり、同社の今後の成長戦略には透明性と持続性の両立が求められる。

Microsoft依存とNvidiaチップ集中がもたらすビジネス構造上の脆弱性

CoreWeaveの売上構造における最大の特徴は、収益の62%をMicrosoftに依存しているという点である。2023年の総売上が19億ドルであるなか、Microsoftからの売上が約11.8億ドルを占める。この一社依存体制は短期的な収益確保には貢献する一方で、取引関係の変化や価格交渉力の低下といったリスクを常に孕んでいる。とりわけクラウドインフラ分野では、契約条件や戦略変更によって供給側の立場が大きく揺らぐ可能性がある。

加えて、同社のサービスはNvidia製の高性能GPUチップに大きく依存している。AIクラウドインフラ市場においては、これらの半導体リソースが競争力の源泉である一方で、供給制約や価格上昇が業績に直結するリスクともなる。特に、Nvidia自体がCoreWeaveの支援者であることから、サプライチェーンの柔軟性に欠ける点も否定できない。技術革新が激しい分野であるからこそ、依存構造からの脱却が中長期的な持続性の鍵となる。

また、競合環境も過酷であり、AWS、Google Cloud、Azureといった業界大手に加え、CrusoeやLambdaといった新興勢力とも競争している。これらの企業の多くは、CoreWeaveの顧客でありながら同時にライバルでもあるという複雑な関係構造を抱える。このような状況下では、単一顧客や単一サプライヤーへの過度な依存は、外的要因によるビジネス変動の引き金になりかねない。事業ポートフォリオの再構築と多角化が急務である。

Source:Investopedia