AIと防衛を軸に成長を続ける米パランティア・テクノロジーズ(NASDAQ:PLTR)が、過去1年で株価を323.23%上昇させた。著名市場アナリストのジム・クレイマーは、政府向け防衛事業の堅調さやCEOカープの手腕を評価し「市場の勝者」と称賛している。

一方、4月2日に発動予定の大型関税を前に、米国株式市場全体は「空売り天国」との様相を呈し、資金の欧州流出も懸念されている。関税による物価上昇とFRBの対応が相まって、資産運用の現場では不透明感が高まっている状況だ。

ヘッジファンドの動向も含め、パランティアは現在、クレイマーが取り上げた14銘柄中でパフォーマンス1位に位置づけられており、AI株としての評価が一段と強まっている。

パランティアの防衛特化戦略が株価を牽引 1年で323%上昇の背景

パランティア・テクノロジーズ(NASDAQ:PLTR)は、防衛および政府機関向けのビッグデータ解析に特化した独自の事業構造により、過去1年間で株価を323.23%押し上げた。ジム・クレイマーは「防衛分野において同社が築いたフランチャイズを高く評価している」と語り、2024年4月以降のパフォーマンスが他銘柄を凌駕している点に着目している。CEOアレックス・カープが推進する政府機関との強固な関係構築と、国防分野における高い信頼性が、業績への安定的な追い風となった。

2025年3月には、イーロン・マスクのプロジェクトDOGEとの連携に言及され、国防コストの削減に資するAIソリューション提供への期待が高まった。加えて、ヘッジファンド64社が保有するという数字も、機関投資家からの信頼を示す材料といえる。AI分野の成長期待と、防衛という公共予算の対象領域に根ざした収益構造が、ボラティリティを抑制しつつ上昇圧力を保ってきた。

一方で、民間向けの展開が限定的である点や、AIブームの中心からはやや距離があるとの見方も存在する。だが、ジム・クレイマーが「パランティアだけは勝者のままでいられる」と語った通り、同社の立ち位置は他のAI企業とは一線を画すものであり、株式市場における独自の価値を築いているのは間違いない。

関税発動が迫る中で揺れる市場心理と投資戦略の転換点

2025年4月2日に発動が予定されている大規模関税を前に、米国株式市場は大きな不確実性に直面している。ジム・クレイマーはこの局面を「ショートセラーズ・パラダイス(空売りの楽園)」と形容し、投資家の逃避行動が強まりつつある状況を指摘した。特に、物価高を警戒するFRBの動向や、ホワイトハウスの対中強硬姿勢が、資産運用戦略に深刻な影響を及ぼしている。

トランプ前大統領による強硬な貿易政策が継続される限り、株式市場が短期的な痛みを伴うのは避けられないとの認識が広がる。クレイマーは「市場の信認を保つには、政権は方針を貫くしかない」と述べており、この発言からも政権側の政治的意思が株式市場に対する柔軟性を奪っている様相がうかがえる。実際、ウォール街ではすでに企業業績見通しの下方修正が相次ぎ、今後の株価推移への警戒感が強まっている。

このような不安定な状況下で注目されるのが、パランティアのような防衛関連のAI企業である。民間需要に左右されにくい収益構造は、関税の影響を相対的に軽減しうる。市場全体がリスクオフに傾く中で、安定成長が見込まれる領域に資金が集中する傾向が強まるとすれば、今後の投資戦略においてパランティア型企業の存在感はより一層増していくだろう。

Source:yahoo finance