米パランティア・テクノロジーズは、IT部門の人員を200人超から80人未満へと大幅に削減しながらも、成長と業務効率の両立を実現している。CIOのジム・サイダーズ氏は、自社のAI基盤「Foundry」を活用し、従来の中央集権型ITから各事業部門に分散した俊敏な体制へと移行したと語る。

背景には、MIT教授からの「IT部門そのものを廃止せよ」という指摘があり、同社はこれを契機に、AIによる自動化と現場主導の意思決定体制を加速。年商40億ドルに迫る中、ITのスリム化を通じて将来の企業像を先取りする動きと見る向きもある。

IT部門を削減しながら成長を維持 パランティアのFoundryが果たす役割

パランティア・テクノロジーズは、従来200人を超えていたIT部門の人員をわずか80人未満へと縮小する一方で、業務スピードと事業成長を両立させている。この大規模な再編の中核を担ったのが、自社開発のAIプラットフォーム「Foundry」である。CIOジム・サイダーズ氏によれば、IT業務を個別の事業部門に直接組み込む形で再構築し、従来の中央集権的な運用体制を脱却したという。

特筆すべきは、ITの削減が単なるコストカットではなく、戦略的効率化の一環として機能している点である。Foundryによるデータ統合や自動化は、現場での即時意思決定を可能にし、情報共有の迅速化と業務の柔軟性を高めた。IT部門が単一組織として管理されていた従来型とは対照的に、同社のアプローチは「分散による集中」を実現している。

この構造転換は、IT部門の存在意義そのものを再定義するものであり、今後の組織設計における一つのモデルとなり得る。技術を単なる支援機能ではなく、事業成長のドライバーとして扱う姿勢が、年商40億ドルに迫る成長の背景にある。

MIT発の問題提起が転機に 「IT部門の解体」は企業文化の転換を促すか

今回の大幅なIT削減の出発点には、MITのある教授による「IT部門を廃止すべき」との提言があったとされる。これをきっかけに、パランティアは従来の構造に疑問を投げかけ、テクノロジーの現場実装を徹底的に推し進めた。その結果、意思決定のスピードは格段に上がり、各部門が自律的に動く体制が整った。これは、単なる構造改革にとどまらず、企業文化の根本的な変化にもつながっている。

パランティアでは「すべてを問い直す」ことが組織文化として浸透しており、時代遅れの慣習や組織構造は容赦なく刷新の対象とされる。この姿勢がIT部門の再設計にも現れており、技術が現場の延長として位置づけられることで、フィードバックループがより短縮された。技術と業務の垣根が消えた結果、スリム化された組織でも十分なパフォーマンスが発揮されている。

多くの企業が依然として肥大化したIT部門を維持している現状において、パランティアの決断は異例ともいえる。AIと自動化による支援が進む中で、こうした文化的変革が企業競争力の差を生む要因となる可能性は否定できない。パランティアの動きは、テクノロジー導入の在り方だけでなく、組織運営そのものに一石を投じている。

Source:yahoo finance