AIスタートアップHakimoが、シリーズAで1,050万ドルの資金調達に成功した。主力製品「AI Operator」は、監視カメラやセンサーを用いて脅威を自動検知し、対応まで自律的に行う次世代のセキュリティエージェントである。休憩も不要なAIが、誤報や人手不足に悩む現場の課題を解消し、警備コストを年間12万5,000ドル削減するとの試算も示された。

導入の容易さと実績から、カーディーラーや学生寮などで成果を上げており、すでに顧客数は100社を突破。今後は映像監視のユニバーサルプラットフォームを目指し、AIによる物理セキュリティの再構築を本格化させる構えだ。

AI Operatorが変える警備の現場 リアルタイム対応と誤報削減の実力

Hakimoが開発した「AI Operator」は、従来の監視カメラやセンサーからのデータを常時取得し、不審者の侵入や徘徊、尾行行為といった脅威を瞬時に検知する。このAIは生成系技術とコンピュータビジョンを組み合わせ、言語で記述可能なあらゆる異常行動を捉える仕組みとなっており、検出後は即座に音声警告を発し、必要時のみ人間オペレーターに引き継ぐ多層構造を持つ。2024年には数千件のセキュリティインシデントを未然に防ぎ、複数の現場で逮捕や人命救助にまで貢献したとされる。

この自律的な対応力により、警備員が常時配置されにくいキャンパスや大型施設において、物理的限界を超えたカバレッジを提供している点が注目されている。実際にある高層マンションでは、従来の有人警備と比較しておよそ100万ドルの費用削減を実現しつつ、セキュリティ品質の維持に成功している。警備業界が直面する人材不足や誤報疲弊の課題に対し、HakimoのAIは代替手段ではなく、すでに有効な選択肢として機能し始めていると言える。

スタートアップの資金調達が示す物理セキュリティの構造変化

HakimoがシリーズAで獲得した1,050万ドルの資金調達は、Vertex VenturesやZigg Capitalといった著名投資家の参加により実現した。同社の累計調達額は2,050万ドルに達し、物理的セキュリティ領域におけるAI主導の革新が投資家の注目を集めていることを示す。この分野では、従来型の警備員配置やアラーム監視がコスト高かつ非効率とされ、技術的な刷新が不可避と見なされている。

CEOのサム・ジョセフ氏は、「質の高い警備員の確保が困難になりつつある現状が変化を後押ししている」と述べる。AIによる監視は、休憩不要、怪我のリスクなし、誤検知の削減という明確な利点を持ち、年間で12万5,000ドル相当のコストを削減できると試算されている。この効率性が、不動産管理や建設現場、カーディーラーといった警備需要が高い業界からの引き合いを後押ししている。

物理空間の安全を守る手段として、AIが主役となる時代が現実味を帯びてきた。Hakimoの成功は、単なるスタートアップの成長物語ではなく、セキュリティ産業そのものの再構築が進行している兆候と見るべきだ。人間の警備を完全に代替することはないにせよ、AIが中心的な役割を担う構図は、もはや遠い未来の話ではない。

Source:VentureBeat