Appleが長年特許を蓄積してきた折りたたみディスプレイ技術が、いよいよ実製品として形になるかもしれない。2018年から複数の特許を取得してきた同社は、2028年に向けて18.8インチの折りたたみOLEDディスプレイを搭載したデバイスの投入を検討中とされる。

M5チップや画面内Face IDに対応する大型iPad Pro、あるいはデジタルキーボードを備えた新型MacBookとしての登場が有力視されるが、AppleはMacとiPadの統合に否定的であるため、ハイブリッド型の可能性は低い。一方で、小型の折りたたみiPadが2026年に先行登場する見通しもあり、折りたたみ市場への本格参入は段階的に進むとみられる。

18.8インチ折りたたみデバイスの登場とその進化の過程

Appleが開発中とされる18.8インチの折りたたみデバイスは、2018年から続く一連の特許取得を起点に、徐々に具体化してきた構想である。特に2024年12月に示されたディスプレイロードマップでは、折りたたみOLEDとRGBタンデムディスプレイの組み合わせが注目を集めた。サイズ感としては13インチのiPad Proを横に2つ並べた程度とされており、携帯性と作業領域の両立を図った設計である可能性が高い。

このデバイスにはM5チップの搭載や画面内Face IDの採用が予測されており、iPad Proとしての進化形を示唆している。一方で、2023年の段階でSamsungとLGが折りたたみディスプレイをApple向けに供給しているという報道もあり、開発が実質的な段階に入っていることをうかがわせる。MacBookとしての展開を想定する声もあるが、AppleがMacとiPadの統合を否定してきた経緯を踏まえると、明確な住み分けが継続される可能性も高い。

この大型デバイスは、タブレットとしての柔軟性とノートPCとしての機能性を両立できる新たなカテゴリに位置づけられるかもしれない。過去にMicrosoftやLenovoが試みたデュアルスクリーン端末との差別化が、Appleにとっての鍵となるだろう。

折りたたみ製品に見るAppleの製品哲学と想定される使用体験

Appleが2026年以降に投入を検討している折りたたみデバイスは、単なる技術披露ではなく、徹底したユーザー体験の設計に基づいた製品となる可能性が高い。アナリストのMing-Chi Kuo氏によると、採用されるディスプレイパネルのコストは600〜650ドル、ヒンジ構造は200〜250ドルとされており、Vision Proと同水準の高精度設計が想定されている。こうした構造は折り目の目立たない滑らかなディスプレイ体験を実現し、Appleらしい完成度の高さが追求されることになる。

また、物理キーボードを廃した完全デジタルキーボード搭載のMacBookという未来像も検討されており、2018年の「キーのないキーボード」の特許がその布石となっている。実現すればトラックパッドとの統合UIや入力フィードバックの新しい形が求められることになり、従来のタイピング習慣を根本から変える可能性もある。

ただし、デバイスの価格帯は2000ドル超ともされ、気軽に手を出せる製品ではなさそうだ。高価格ゆえに初期出荷台数は限られる一方で、画面サイズやApple Pencil Proへの対応といった仕様によっては、プロフェッショナル層やクリエイターにとって魅力あるツールになりうる。製品の方向性次第では、iPad ProともMacBookとも異なる新しいライフスタイルを提案する存在になるかもしれない。

Source:AppleInsider