中国発のAIスタートアップDeepSeekが、事前告知なしで大幅に性能を向上させた「V3-0324」モデルを公開し、AI業界に緊張を走らせた。ベンチマークとコード処理能力の急伸により、オープンソース勢がNvidiaの独走に待ったをかける可能性が浮上している。
GPU市場を支配するNvidiaは、過去5年で1,700%を超える株価上昇を遂げたが、2025年初頭以降は調整局面に入りつつある。高評価の背後には圧倒的な財務指標と成長性がある一方、AI競争環境の変化が同社の先行きに新たな不確実性をもたらしつつある。
ウォール街ではなお「強い買い」評価が多数を占め、目標株価も現在水準から28%の上昇余地を見込むが、DeepSeekのような存在が市場にどのような影響を与えるかは、今後の動向を見極める鍵となる。
DeepSeekの新型モデルが市場に与えた衝撃とその実力

DeepSeekは、従来のV3モデルを改良した「V3-0324」を2025年3月にHugging Face上で密かに公開し、AI業界の一角に不意打ちを仕掛けた。このモデルは、コード生成能力およびベンチマークスコアにおいて顕著な向上を示しており、実用レベルでの性能評価において一部商用モデルと同等以上の水準に達したとされている。これにより、オープンソースAIの競争力が改めて注目される展開となった。
市場はこの動きを敏感に捉え、NvidiaをはじめとしたAI関連株が軒並み弱含みに転じた。特にNvidiaは、GPUによるAI演算能力の提供において支配的な立場にあるだけに、こうした外部ショックに対する投資家心理の揺らぎが如実に現れた格好である。また、DeepSeekのような非西側企業の技術的飛躍が、AIインフラの地政学的構造にも影響を及ぼす余地があるとみられる。
一方で、V3-0324の性能は公開されたベンチマークや初期評価に基づくものであり、商業導入や広範なスケーラビリティについては不透明な部分も残る。したがって、この技術革新が即座にNvidiaの牙城を崩すとは言い切れず、むしろ今後の競争環境の多極化を予感させる前兆と捉える方が現実的である。
高評価を支えるNvidiaの業績と評価水準の再考
Nvidiaは2024年度第4四半期の決算で、1株あたり利益(EPS)を市場予想の0.74ドルを大幅に上回る0.89ドルと発表し、AI向け需要の拡大を裏付ける結果となった。年間売上は1,305億ドル、純利益は728.8億ドルに達し、同社のAIインフラ事業が成長をけん引していることを証明している。2026年度および2027年度のEPSもそれぞれ4.16ドル、5.15ドルと予想されており、収益の拡大が引き続き見込まれている。
しかし現在の株価水準は、予想PERが27.4倍、売上高倍率が21.3倍と、同業他社に比べても極めて高い評価が織り込まれている。さらに利益率55.85%、ROE112.33%という卓越したファンダメンタルズは強気筋にとっての論拠であり続けているが、そこには今後の成長シナリオが想定通りに進むという前提がある点は看過できない。
44名のアナリストによる評価でも「強い買い」が多数を占め、目標株価は177.19ドルと現在値よりも28%の上昇余地が見込まれている。ただし、DeepSeekを含む新興勢の台頭により、今後は「成長の確度」に対する市場の見方が変化する可能性も否定できず、株価にとってのプラス要因とリスク要因がより拮抗する局面に入ったとみるべきである。
Source:Barchart