米e.l.f. Beauty株において、Vol/OI比が22.75という異例の数値を記録したオプション取引が観測された。過去最高値から71%の急落を受け、投資家の間で強い関心を集めている。同社は売上の安定成長や高い粗利益率を維持しているが、空売りファンドMuddy Watersによる売上水増し疑惑が昨年報じられ、集団訴訟へと発展した経緯がある。

現状、財務基盤は堅調でありながら、収益性指標や利益率に陰りが見られ、評価指標も低水準にある。これを受けて市場では、ネイキッド・プットやブル・プット・スプレッドなど、2種類の戦略的なオプション取引が提示されているが、法的リスクと市場変動性への懸念が残る中、慎重な判断が求められる。

株価急落の背景にある財務の強靭性と脆さ

e.l.f. Beautyは、2024年3月に記録した過去最高値$221.83から、わずか数週間で71%の下落に見舞われた。市場全体の変動を超えるこの急落は、企業の持続的な売上成長や粗利益率71.1%という高水準の数値では説明がつかない。

同社は直近24四半期で連続増収を達成し、2025年度の売上予測も13億500万ドルと依然高い水準にある。しかし、利益面では調整後純利益が前年から減少、GAAPベースの純利益も株式報酬の増加により減少しており、収益性には鈍化の兆しが見える。

こうした状況において注視すべきは、EBIT率の低下傾向である。2023年度の11.8%から現在は10.1%と収益の効率性が後退している。一方で、負債比率は時価総額の8.4%と極めて低く、現金残高も7,400万ドルに達するなど、バランスシートの安全性は確保されている。総じて同社は成長性と健全性を両立させているものの、利益構造の変化とそれに伴う市場の警戒感が、今回の株価調整の根底にあると考えるべきだろう。

空売り報告と法的リスクが市場心理に与える影響

e.l.f. Beautyの株価に深刻な影響を与えた要因のひとつが、空売りファンドMuddy Watersによる報告書の存在である。2023年11月、同社が売上を最大1億9,000万ドル水増しした可能性があると指摘されたことで、集団訴訟が提起され、市場には強い不信感が広がった。企業側は不正を全面的に否定しているが、会計上の信頼性を損ねる報道は、ファンダメンタルズが良好な銘柄であっても投資家の行動に影を落とす。

このような法的リスクは、短期的には株価に重しとなり、中長期のバリュエーションにも下押し圧力をかける要因となる可能性がある。たとえ報告が誤認に基づくものであったとしても、裁判の進行や風評の影響は投資行動を抑制する。特に機関投資家にとっては、レピュテーションリスクを回避するためポジション縮小の判断に至るケースも少なくない。空売り報告に端を発した信頼性への懸念が、e.l.f. Beautyの本質的価値を市場が正しく評価しにくくしている状況が続いている。

オプション戦略が示唆する市場の二極化した見方

異常なオプション取引の活発化は、e.l.f. Beautyに対する市場の分断を象徴している。Vol/OI比22.75という異常値は、通常の取引環境では見られない水準であり、明確な思惑が交錯している証左である。2026年1月満期の$45プットにプレミアムが集まったことから、悲観的な見方が優勢であることは否めない。ただし、ネイキッド・プットやブル・プット・スプレッドといった戦略が注目されている点からは、限定的ながらも価格反発に期待を寄せる層の存在も浮かび上がる。

ブル・プット・スプレッドの構築は、バリュエーションの魅力が意識されていることを意味する。過去最低水準に近づいたEV/売上倍率(4.12倍)や、継続的なシェア拡大といったポジティブ材料が支持されている。

ただし、成功には株価が$43.70以上を維持する必要があり、訴訟リスクやインフレ指標、消費者信頼感の低下など外部要因が重なれば、戦略が裏目に出る可能性もある。市場は今、e.l.f. Beautyの将来性をめぐって、強気と弱気の視点が鋭く対立する局面にある。

Source:Barchart.com