AIとクラウド事業への戦略転換が進むBit Digital(BTBT)に対し、ウォール街のアナリストが強気の姿勢を崩していない。2024年度には売上高が前年比141%増、調整後EBITDAが約5.9倍と財務実績が急伸。買収による人材・設備の拡充や、高性能GPUを活用したHPCプラットフォーム「WhiteFiber」の立ち上げなど、インフラ整備も加速している。
クラウドサービスは第4四半期で収益の半分を占め、今後はB200 GPU導入によりARRの更なる押上げが見込まれる。データセンター容量も510メガワットまで拡張が進む中、アナリスト5名全員が「ストロング・バイ」の評価を付け、現在の株価から最大190%の上昇余地を予測している。
クラウドとAI事業が牽引する収益構造の転換

Bit Digitalは従来のビットコインマイニング専業からの脱却を進め、AIインフラおよびクラウドサービス領域への本格展開に舵を切った。特に高性能コンピューティング(HPC)を担う「WhiteFiber」プラットフォームの導入が、同社の収益構造に大きな変化をもたらしている。2024年度第4四半期におけるクラウドサービスの収益は1,300万ドルに達し、全売上の50%、粗利益の64%を占める水準にまで成長した。これは前年におけるビットコインマイニング依存度98%という状況と比較すると、戦略の実効性を示す明確な証左である。
また、同社はB200 GPUを512基導入する計画を掲げ、年間収益換算レート(ARR)を現在の6,200万ドルから最大2,500万ドル上積みする可能性を視野に入れている。データセンターの設備投資に伴う初期費用は利益率に一時的な圧力をかけているが、GPUの自社保有によって長期的な収益性の改善が期待される。こうした転換は、成長が鈍化する暗号資産市場に依存せずに収益源を確保するという現実的な選択である。
財務体質の強化と買収による事業基盤の拡充
Bit Digitalは2024会計年度において、売上高を前年比141%増の大幅な伸びとし、調整後EBITDAは前年度の1,240万ドルから7,300万ドルへと跳ね上がった。この急成長を支えたのは、AIおよびクラウド領域へのシフトに加え、Enovumの買収による戦略的な補完である。買収によってデータセンター運営ノウハウと人材を獲得し、顧客基盤の拡大と施設整備の加速が可能となった。また、カナダと米国における計510メガワットのインフラ開発パイプラインのうち、156メガワットが独占的意向表明書(LOI)に裏打ちされており、将来の設備稼働に向けた布石が着実に進んでいる。
一方で、負債ゼロのバランスシートは、短期的な財務リスクを抑えながら機動的な投資判断を下す柔軟性をもたらす。現金収支の安定と内部資金による拡大は、資本市場への依存を避け、経営の主導権を自社に保持し続ける上でも重要な意義を持つ。規模と資金調達能力が物を言うAIインフラ市場において、こうした財務的安定は競争力そのものと見なせる。成長戦略と財務管理の両輪が機能している点が、アナリストからの高評価につながっている。
Source:Barchart