AMDの新型CPU「Ryzen 5 9600」がPassMarkに登場し、上位モデルとされる「Ryzen 5 9600X」と極めて近い性能を記録した。総合スコアではわずか2.2%差、シングルコアでも3.2%差にとどまり、両者の仕様差がブーストクロック200MHzのみに過ぎないことを裏付ける結果となった。

現在はOEM市場への限定供給にとどまっているが、今後のDIY市場向け流通が進めば、価格差約4,000円という点からもコストパフォーマンスを重視するユーザーにとって有力な選択肢となる可能性がある。

両モデルともオーバークロックとPBOに対応しており、調整次第ではさらなる性能引き出しも期待される状況である。

Ryzen 5 9600と9600Xの性能差は事実上限定的 PassMarkベンチマークが示す数値的根拠

PassMarkにおけるスコアは、Ryzen 5 9600が29,369ポイント、Ryzen 5 9600Xが30,016ポイントとなり、差はわずか2.2%に留まった。シングルコア性能においても、9600が4,433、9600Xが4,581と3.2%の差であり、ベースクロックやキャッシュ、TDPといった他の主要スペックが一致している点と照らせば、性能差は実質的にブーストクロックの200MHzに集約される構図となっている。

加えて、両モデルともPrecision Boost Overdrive(PBO)への対応が確認されており、オーバークロックの余地を持つ構成であることから、ユーザーによる調整次第では9600が9600Xに肉薄、あるいは凌駕する可能性も排除できない。ベンチマーク上の僅差は、コア・スレッド数の一致と併せて、AMDが意図的にSKUの差異を絞り込んだ結果と解釈される余地がある。

このことから、9600は純粋な性能追求というより、価格とのバランスを見極めた選択肢として設計されたCPUであることがベンチマーク数値からも読み取れる構造となっている。

小売市場流通の遅れと価格設定が意味するもの

Ryzen 5 9600は2024年中に発表されたものの、現時点での流通はOEM市場に限定されており、一般消費者が入手できるDIY市場への展開は依然不透明な状況にある。

報告によれば、価格帯は9600Xより£15〜£20(約3,000〜4,000円)安く、最終的な小売価格は約£200(約38,000円)程度に設定される見込みとされている。性能差が極小であることを踏まえると、この価格差は実用上の差異以上の意味合いを持ちうる。

しかし、依然として小売ルートでの供給が確認されていない点を考慮すれば、このCPUが「コスト効率に優れる選択肢」として市場に広く認知されるためには、安定的な流通体制の確立が前提条件となる。特に価格に敏感な自作ユーザー層にとっては、入手性こそが意思決定に直結する要素であり、性能がいかに接近していようとも、選択肢として現実味を持たない可能性がある。

AMDがこの価格帯にRyzen 5 9600を投入した意図としては、インテルの同クラス製品との競争圧力や、ポスト・エントリーモデルを求める需要層の吸収が念頭に置かれていると考えられる。価格性能比の最適化が真価を問われる領域といえるだろう。

Source:KitGuru