年初来で9.8%下落し、過去最高値からも約18%の調整局面にあるAmazon株は、消費低迷、関税政策、AI投資への疑念、そして第4四半期決算の不振といった逆風に直面している。
だが一方で、AIを活用した業務効率化の成果やeコマース、クラウド、デジタル広告など成長分野への着実な展開により、中長期的な収益拡大への地盤が築かれつつある。
P/Eレシオの見直しや利益率の持続的な改善と相まって、複数のアナリストが高評価を与える中、今回の株価調整は長期視点の戦略的な買い場となる可能性がある。
トランプ関税と消費低迷がもたらしたAmazon株の急落構造

2024年初頭から、Amazon株は過去最高値から約18%の下落を記録し、市場全体のセンチメント悪化を象徴する動きとなった。背景には、トランプ前大統領による対中関税復活の可能性に対する懸念がある。企業は価格転嫁か利益圧縮かという二律背反を迫られ、消費環境の弱体化と相まって、小売セクター全体に波及的な重しをかけている。
Amazonにとって最大の収益源である米国eコマース事業も例外ではなく、WalmartやTargetなどの競合が示した慎重なガイダンスが示すように、消費支出の鈍化は企業成長への確実な足かせとなる。さらに、四半期決算におけるガイダンスの下振れも株価下落に拍車をかけ、投資家の心理的支柱が崩れたことは明白である。
ただし、これらの要因は短期的な業績変動に直結するものであり、企業の基礎的な成長力を否定するものではない。むしろ、調整局面は長期的な収益回復に備えた再評価の契機となり得る。外的リスクに過剰反応する市場の特性を踏まえると、今回の下落は本質的価値を見直すきっかけとして重要である。
AIとバリュエーション再評価の交差点に立つAmazonの成長戦略
Amazonが打ち出したAI関連投資の規模は、2024年に830億ドル、2025年には1,000億ドルに達する見通しであり、AI熱に沸いた2023年とは異なり、現在の市場はそのROI(投資利益率)に対して冷静な評価を求める局面にある。この潮目の変化に対し、Amazonは単なる「未来の可能性」ではなく、すでに各事業部門でAIの収益化に向けた実装を進めており、物流効率や顧客エンゲージメント改善といった形で成果が現れている。
特筆すべきは、ショッピングアシスタント「Interests」の導入である。これはユーザーの嗜好に応じた商品提案を行うもので、膨大な商品群の中から的確な提案を可能とすることで、コンバージョン率の向上に寄与する。このような機能は、Amazonのeコマース事業の競争優位性をさらに強化し、AI投資の正当性を裏付けるものとなりうる。
一方で、P/Eレシオ31.8倍というバリュエーションは、マグニフィセント・セブン中では高水準に位置する。しかし、収益性と成長性の両立が見込まれる事業構造を踏まえれば、現在の水準は割高とは言い切れず、むしろ潜在的な利益率の改善や新技術の収益化が織り込まれていない点で過小評価の余地を残していると見ることができる。
Source:Barchart