GoogleがAndroidの開発体制を刷新し、従来のオープンソースモデルから社内主導の閉鎖的運用へと大きく舵を切った。これにより、AOSPとGMSの二重構造は解消され、今後はGoogle内部で統一的に管理される形となる。AI主導の戦略転換を背景に、Androidは中核から外れつつあるという見方も出ている。
長年Androidを率いたDavid Burke氏の退任や、Geminiを中心とするAI開発の加速など、Google内部の優先順位の変化が今回の判断に影響した可能性がある。コード公開のタイミングが遅れることで、開発者にとっては情報収集が難しくなる場面も増えそうだが、一般ユーザーの使用体験には大きな変化はなさそうだ。
Androidのソースコード非公開化が意味するもの

GoogleがAndroidの開発を完全に社内で行う方針を明確にしたことで、これまで提供されてきたAOSP(Android Open Source Project)のプレリリース的な情報共有は事実上終了する見込みである。これまで開発者や一部ユーザーが注目していた「未発表コードの断片」は今後は姿を消し、ソースコードの公開はプロダクション段階に限定される。加えて、GMS契約によって提供されるAndroidと、AOSPとの二重構造も整理され、Google内部の統一されたコードベースに一本化されると見られている。
この変更により、Googleは開発中のフィードバック対応やバージョン間の整合性維持といった負荷を軽減できる。一方、開発者にとっては、今後のバージョンで何が変わるのかを事前に把握することが難しくなり、アプリ設計や動作確認の準備期間に影響が出る可能性がある。ただし、Milanesi氏が指摘するように「最終的にアクセスできる内容は変わらない」ため、完成版のAndroidとしての使い勝手に大きな変化はないと考えられる。
一般的なAndroid端末の利用者にとっては、アップデートの頻度や内容がこれまで通りであれば、今回の非公開化が直接的に体感されることは少ない。とはいえ、開発初期段階でのコード検証ができなくなることで、独自カスタムやROM開発に携わる一部の層には影響が出ることは避けられない。
AI優先の開発体制が示すAndroidの今後
今回の方針転換の背景には、GoogleがAIを軸に据えた開発体制へと明確にシフトしている現状がある。2024年のGoogle I/Oにおいては、Geminiを中核としたAI戦略が打ち出され、ハードウェアとソフトウェアのチームを「Platforms and Devices」という枠組みで統合するなど、組織構造自体が再編されていた。こうした動きが、Androidという単一OSの開発に特化する体制からの脱却を加速させている。
また、14年間にわたりAndroidの開発を主導してきたDavid Burke氏がアドバイザー職に移行した点も象徴的だ。経験豊富なキーパーソンが現場を離れたことで、開発の中心がモバイルOSからより汎用的なAI技術へと移行している可能性がある。Geminiが多様なデバイスに対応するプラットフォームへと進化していく中で、Androidはその一構成要素に過ぎなくなる段階へと入りつつある。
このような変化が続けば、将来的にはAndroid OSそのものの役割が見直され、より軽量化された形でAIインターフェースの一部として組み込まれていくことも考えられる。ただし現時点では、消費者向けの仕様やUIの大幅な変更は示唆されておらず、表面的な使用感に関しては当面大きな揺らぎはないだろう。
Source:Gizmodo