過去3年間におけるビットコイン全ブロックのうち、Foundry USAとAntPoolの2大マイニングプールが合計56.37%を占めていたことが、mempool.spaceのオンチェーンデータにより明らかとなった。分散型ネットワークとされるビットコインにおいて、事実上2主体による採掘支配は重大な構造的リスクをはらむ。
特に注目すべきは、ナカモト係数が「2」という数値に示されるように、わずか2者の連携でネットワークの意思決定に影響を及ぼせる状況にある点である。さらに、AntPoolが他5プールにも影響力を持つ可能性が匿名アナリストb10cにより指摘され、実質的な集中度はさらに高いとみられている。
ビットコインの信頼基盤である非中央集権性は、報酬の規模経済に引き寄せられる形で徐々に失われつつある。今後もこうした構造が続く場合、ネットワークのセキュリティや健全性に対する懸念が拡大する可能性がある。
2プールが支配する採掘構造とナカモト係数の警戒水準

2025年3月28日までの3年間において、ビットコインの全160,432ブロックのうち、Foundry USAが28.72%、AntPoolが21.42%を採掘し、合計56.37%に達した。この数値は、ブロックチェーンネットワークの分散度を測る「ナカモト係数」がわずか2であることを意味する。ナカモト係数とは、ネットワークの過半数を支配するために必要な独立した主体の最小数であり、この数値が低いほど中央集権化のリスクが高いとされる。
また、マイニングプールは複数のマイナーで構成されているものの、実質的な決定権を持つのはプールコーディネーターである。彼らはブロックの構成から報酬の分配、ネットワークへのブロードキャストまでを一手に担っており、その意思がプール全体の挙動を決定づける。つまり、形式上の「分散性」は実態を反映していないケースも多い。
こうした状況は、分散合意を根幹とするビットコインの設計思想と乖離しており、技術的な理想と経済的な現実との間に大きな齟齬を生んでいる。ナカモト係数2という現実が示すのは、ネットワークの安全性がごく少数の意志に依存している危うさである。
特定プールの影響力とトランザクション検閲の前例
Finboldが報じた通り、F2Poolによるトランザクションのフィルタリング事例は、実際にマイニングプールが任意の判断で取引の取り扱いを左右した先例として注目に値する。このような行為が現実に起きたことは、他の大規模プールにおいても同様の行動が可能であることを示唆しており、ネットワークの中立性に対する不安を呼んでいる。
さらに、著名な匿名アナリスト「b10c」による調査では、AntPoolがBTC.com、Binance Pool、Poolin、EMCD、Rawpool、Braiins*といった他の複数プールとブロック構成やトランザクション優先順位において類似性を示している点が指摘された。これはAntPoolが単に大規模な採掘者であるにとどまらず、他のプールに影響を及ぼしている可能性を意味する。
仮にこうした影響が事実であれば、名目上は複数に見えるプールの実態が、1つの意思決定に収束するリスクを孕んでいることになる。そのような構造が進行する場合、ネットワークの合意形成が非公開かつ不透明な判断に左右される余地が広がる。透明性と多様性を支柱とするはずのビットコインが、逆に排他的な構造に収束しつつあることに対して、今後の議論が不可欠である。
Source:Finbold