『マネー・ショート』で知られるマイケル・バリーが最大比率で保有するアリババ株に対し、ウォール街の強気姿勢が鮮明になっている。みずほ証券は目標株価を従来の140ドルから170ドルへと20%引き上げ、AI分野での競争力やクラウド事業の拡大を評価した。
背景には、同社が今月発表した新AIモデル「QwQ-32B」や、AGI基盤の構築といった技術的優位性がある。さらに、中国国内の消費回復や政府のテック支援姿勢も下支えとなっており、他の大手証券も一斉に買い評価を継続。年初から55%超の上昇を見せる中、健全な調整局面との見方も広がる。
市場環境が変動する中で、堅実な業績回復と技術革新の両立を評価する動きが加速しており、今後の株価推移には一層の注目が集まる。
AI戦略の深化が評価を押し上げる要因に

アリババが3月に発表した新AIモデル「QwQ-32B」は、同社の技術的優位性を象徴する動きとされている。みずほ証券のアナリスト、ジェームズ・リーは、同モデルがDeepSeekの最上位モデル「R-1」と同等もしくはそれ以上の性能を持つ可能性に言及し、これが株価目標の引き上げに直結した。リーはまた、アリババが汎用人工知能(AGI)への拡張に必要な基盤をすでに構築しており、業種を問わずエンドユーザー向けに柔軟なソリューション提供が可能になると指摘した。
このAI戦略は、単なる技術革新にとどまらず、今後の収益源の多角化と顧客接点の拡大を意味する。従来のeコマースを基盤に、APIベースのAIプラットフォームを展開することで、BtoB領域における優位性が強化される可能性もある。
また、こうした成長戦略が投資家の信頼を支える土台となっており、資本流入の安定化にも寄与している点は看過できない。技術革新と市場戦略が並走することで、従来の中国テック銘柄の中でも異彩を放つ存在となりつつある。
財務の健全性と中国経済回復が相乗効果を形成
みずほ証券がアリババの目標株価を170ドルとした背景には、AIだけでなく財務基盤の強さとマクロ経済の支援環境がある。同社はパンデミック以降、収益構造を見直し、非中核部門においても今後2年以内に損益分岐点を達成する可能性があるとされている。タオバオと天猫グループに依存しない収益分散が進行しており、持続的な成長に向けた地盤が整いつつある。
さらに、2026年度のクラウド部門の売上成長率予想が13%から17%へ上方修正された点も見逃せない。これは、中国国内の企業IT支出が回復傾向にあることを背景としており、アリババのクラウド事業が今後の柱になる可能性が示唆されている。加えて、中国政府がテクノロジー産業に対して以前よりも融和的な姿勢を示していることも、投資環境にとって追い風となっている。
こうした要因は、短期的な株価の上昇だけでなく、長期的な企業価値の評価に直結する。複数のアナリストが170〜190ドルの目標株価を掲げる背景には、定量的なファンダメンタルズの強さと、制度・市場環境の安定化という定性的な変化が複合的に作用していると考えられる。
Source:Finbold