マイクロソフトが過去数十年にわたり開発しながらも、市場投入に至らなかった注目デバイスの数々が、同社創業50周年を機に振り返られている。二画面PC「Courier」や非接触操作を目指した「Lumia McLaren」、さらにペン重視の8インチタブレット「Surface Mini」など、いずれも時代を先取りした設計や独自のUIを備えていた。
健康追跡にKinectを組み合わせたウェアラブル「Xbox Joule」や、防水性を高めた「Band 3」など、スマートバンド分野への挑戦も垣間見える。また、デジタルノートをポケットに収める構想だった「Surface Andromeda」、Windows 10Xを載せた「Surface Neo」も登場し、携帯性と生産性の融合を模索していた。
未発売に終わったデバイスが示した、先駆的な操作性とUI設計の実験

マイクロソフトが開発を進めながら市場投入を見送った各種デバイスは、操作性とUIの革新に強い意志を注いでいた点が共通している。2010年にキャンセルされた「Microsoft Courier」は、2枚の7インチディスプレイをヒンジで接続したノート風デバイスで、手書き入力に特化した構造が印象的だった。Windows 8とは異なる独自OSと専用アプリプラットフォームを搭載予定で、汎用的なアプリとの互換性を犠牲にしてでも、没入感あるデジタルノート体験を追求していた。
一方、2014年にキャンセルとなった「Lumia McLaren」は、画面に触れずに操作可能な「3D Touch」を搭載予定であり、UIパラダイムとして「MixView」が導入されるはずだった。スマートフォンの物理的なインターフェースを根本から変える挑戦であり、ユーザーの接触なしに反応する操作体系は、現在のジェスチャー操作にも通じる設計思想といえる。
実用性やコスト面での課題が先行し、日の目を見ることはなかったが、当時としては極めて先進的なアプローチが多数盛り込まれていた。こうした試みが後のSurface Duoやジェスチャー操作の進化に繋がっていく構図は、見過ごせない要素である。
ハードウェア設計に宿った”持ち歩ける未来”のビジョンと挫折
マイクロソフトが目指したのは、従来のPCやスマホの枠を越えた「持ち歩ける未来」の具現化だった。その象徴が「Surface Andromeda」であり、2018年にキャンセルされるまで、ポケットサイズのデジタルノートとして構想されていた。折りたたみ式のデュアルスクリーンと、ペン入力に最適化されたUI設計、そしてホーム画面そのものを手書きのノートのように扱えるという発想は、単なるスマートフォンとは異なる利用価値を持っていた。
この方向性はさらに進化し、「Surface Neo」として9インチ×2画面、360度ヒンジ、Windows 10Xの搭載といった形で再定義された。Windows向けにUIとOSを一新する取り組みだったが、結果的には2021年にキャンセル。搭載予定だったIntelのLakefieldプロセッサーの終了とOS開発の打ち切りが背景にあった。
こうしたプロジェクトに共通しているのは、日常に持ち運べる情報端末として、従来のOSやハード構成を大胆に捨て去ろうとした点にある。その試みは今なお多くのユーザーの記憶に残り、未完成ながらも未来を先取りしていた設計思想として語り継がれている。
Source:Windows Central