OpenAIのChatGPTが、スタジオジブリ作品を模したAI画像生成の急増により広範な障害を引き起こした。GPT-4oの新機能解禁直後から、ユーザーが宮崎駿の作風に影響を受けたポートレートやシーンを大量に生成したことで、サーバーへの負荷が爆発的に高まり、障害追跡サービス「DownDetector」には229件超の苦情が寄せられた。

OpenAIのサム・アルトマンCEOは、X上で「GPUが溶けている」とユーモラスに現状を報告し、無料ユーザーへの生成回数制限を発表。一方で、2016年に宮崎監督がAI技術に強い嫌悪感を示した映像が再浮上し、芸術とテクノロジーの関係性を巡る論争が再燃している。

SNSでは障害への不満と同時に、ChatGPT依存を笑いと共に語る投稿も目立ち、AI生成アートの普及と影響の大きさがあらためて浮き彫りとなった。

ジブリ風AI画像の爆発的人気とOpenAIサーバーの限界

GPT-4oによる画像生成機能の拡張を受け、世界中のユーザーがスタジオジブリ風の作品にインスパイアされたイラストやシーンを次々に生成した。

このブームの中心には、『千と千尋の神隠し』や『君たちはどう生きるか』といった作品を模したAIアートがあり、ミーム文化とも結びついてネット上で急速に拡散した。結果としてOpenAIのインフラは一時的に過剰な負荷を受け、ChatGPTの動作に広範な障害が発生した。

障害追跡サービス「DownDetector」には229件超の不具合報告が寄せられ、そのうち59%がサービス接続に関するものだったとされる。この異常なアクセス集中を受け、OpenAIは無料ユーザーに対して画像生成を1日3回までに制限する措置を取った。CEOのサム・アルトマンは、Xにて「GPUが溶けている」と表現し、事態の深刻さをユーモラスに認めた。

この騒動は単なる技術的トラブルにとどまらず、AI生成アートに対する社会的需要の急速な拡大を象徴する出来事といえる。画像生成の民主化が進むなか、従来のインフラでは対応しきれない領域に突入しつつある現実を浮き彫りにした。

宮崎駿のAI批判が再注目される背景と文化的含意

今回のAI画像生成ブームを受けて、2016年に公開されたスタジオジブリの宮崎駿監督のインタビュー映像が再び話題となっている。映像の中で宮崎氏は、AIが制作した実験映像に対して「生命そのものへの侮辱だ」と強く否定的な見解を示していた。これはAI技術が芸術に介入することに対する根源的な違和感と倫理的懸念を反映している。

ジブリ風AI画像の流行は、宮崎作品のビジュアル様式がデジタル模倣可能なほど確立されたスタイルであることを示している一方、その模倣が創作の本質を捉えていないとの批判も根強い。特に、キャラクターの表情や背景の質感など、感情の機微を伴う「手描きの温度感」がAIでは再現不可能だという声がある。

このような反応は、技術進化と文化的アイデンティティの交錯点にある。ジブリ作品が「人間の手」による制作を貫いてきた歴史を考えると、AI生成物に対する懐疑は単なる保守的反応ではなく、創作と人間性の関係に対する根本的な問いかけといえるだろう。今後もこの議論は、芸術と技術の境界線を再定義する契機となるはずだ。

Source:BizzBuzz