テスラ株を巡るウォール街の評価が前例のないほどに分裂している。HSBCは中国市場での競争激化や欧州でのブランド力低下を理由に、目標株価を130ドルとし50%超の下落余地を警告。一方でWedbushは自動運転やロボティクスの革新性を重視し、550ドルの高評価を維持している。
さらにARKインベストメントは、将来的にロボタクシーが収益の90%を占めると仮定し、株価は2,600ドルに達するとする。アナリスト40名の評価も「強く買い」から「強く売り」まで割れ、平均目標株価は337.42ドル。短期的な業績の逆風と長期的な技術革新の期待が交錯し、市場の評価は極端な振れ幅を見せている。
分裂するアナリスト評価 130ドルから2,600ドルまで広がる見通しの背景

テスラ株の評価は、ウォール街でも類を見ないほど大きく割れている。HSBCのマイケル・ティンダル氏は、競争が激化する中国市場やブランド力が陰りを見せる欧州地域の状況を踏まえ、目標株価を130ドルに引き下げた。これは現在の水準から50%以上の下落を示唆する悲観的なシナリオである。一方で、Wedbush証券のダン・アイブス氏は、自動運転技術やロボティクスといった中長期の成長ドライバーに期待を寄せ、550ドルの強気目標を維持している。
これに加え、ARKインベストメントはロボタクシー事業に大きな比重を置いたモデルを提示し、5年以内に2,600ドルに達する可能性を示した。ARKの予測では、2029年時点で企業価値の90%をこの新領域が占めるとしており、EV販売の比重は大幅に低下する見込みである。なお、テスラを追跡するアナリスト40名のうち「強く買い」とするのは15名、「強く売り」は10名に上り、同社の成長性に対する解釈が根本的に異なっている現実が浮き彫りとなっている。
こうした分裂の要因は、テスラの現在の自動車販売に関する懸念と、将来の技術革新に対する期待とのギャップにある。短期的業績の弱さを重視するか、中長期的な構造変化に賭けるかで、評価は対極的な姿を見せている。
自動運転とロボティクスが握るテスラの未来 成長シナリオの中核を検証する
ARKインベストメントが描くテスラの成長曲線は、自動運転技術とロボティクスを中心に構成されている。2029年における企業価値および収益の90%がロボタクシーによって生み出されるとするこのシナリオでは、EV事業は売上の約4分の1、利益の1割程度にとどまる見通しである。ARKはテスラが単なる自動車メーカーから、都市インフラの一部を担う技術企業へと変貌することを前提としている。
また、ARKの予測モデルには、2,000ドル(弱気)、2,600ドル(中立)、3,100ドル(強気)という3つのシナリオが用意されている。最も保守的な前提でも株価は現在より大幅に上昇する計算となる点が特徴である。自動運転だけでなく、「オプティマス・ロボット」や「定置型エネルギー貯蔵」、「スーパーチャージャーネットワーク」といった事業の多角化も、成長余地として評価されている。
ただし、こうした未来像は既存事業の収益構造とは大きく異なる領域に根ざしており、技術的・規制的な不確実性を多く含んでいる。市場がこの前提をどこまで織り込むかによって、株価の振れ幅も大きく変動することが予想される。現時点では、それを裏付ける事業成果がまだ限定的である点に注意が必要である。
Source:Barchart