インテルの新CEOリップ・ブー・タンは、同社の競争力回復に向けたロードマップの中核として、18Aプロセスノードを採用した次世代CPU「Panther Lake」と「Nova Lake」の投入時期を明らかにした。Panther Lakeは2025年後半に登場予定で、最大16コア構成のハイブリッドアーキテクチャを採用し、AI処理対応GPUも統合される。18AノードではRibbonFETやPowerViaといった革新技術により、性能と密度が大幅に向上する見通しだ。

一方、2026年には最大52コア構成のNova Lakeが控えており、TSMCとの協業による歩留まり改善も期待される。新CEOは18Aを用いたサーバー向けXeonやチップレット技術の進化も推進する姿勢を見せるが、GPU戦略には不透明感が残る。

Panther Lakeが切り拓く18A時代の幕開けと新アーキテクチャの可能性

2025年後半に登場予定の「Panther Lake」は、インテルが自社製造で初めて18Aプロセスノードを本格採用するCPUとして位置づけられている。RibbonFETとPowerViaという革新技術が導入されており、これにより従来ノード比で最大15%のワット性能向上と、30%のチップ密度向上が期待されている。PコアとEコア、さらにLPEコアを組み合わせた16コア構成のハイブリッド設計により、マルチタスク処理や消費電力の最適化を狙う。

また、統合型GPUも搭載されることで、グラフィックス処理やAI演算処理の基盤としての役割も強化される見通しだ。アリゾナ州のインテル拠点ではすでに量産準備が進んでおり、歩留まりの課題を抱えながらも、2025年半ばには設計完了を迎えるという。一方で、18Aの量産は未だ安定せず、歩留まりが20〜30%と低調に留まっている点には注意が必要である。

製品としての性能や消費電力への影響は今後の実機検証を経て評価されることになるが、従来製品に見られた技術停滞から脱却する布石としては注目に値する。特にハイブリッドアーキテクチャの進化が、今後のノートPCや小型デバイスにどう波及するかが重要な観点となる。

Nova Lakeが見せる高性能化の次なる一手と製造戦略の転換点

Panther Lakeの次に控える「Nova Lake」は、2026年登場予定の次世代CPUとして、最大52コア構成に対応するとされている。Coyote CoveとArctic Wolfと呼ばれるアーキテクチャを組み合わせることで、より高い並列処理能力を実現し、デスクトップやワークステーション用途における処理性能の底上げが図られると見られている。ここではTSMCの先端ノードも併用される予定であり、自社製造に加えた外部ファウンドリの活用が、供給面や歩留まりの安定化を後押しする可能性がある。

また、Clearwater Forestという名称の次世代Xeonも同時期に登場し、18AプロセスとEコア専用設計により、データセンター向けに効率と性能の両立を目指す。Foveros Directといったチップレット統合技術の進化が加わることで、従来のモノリシック構造では難しかったスケーラビリティや発熱対策への対応が進むことになるだろう。

一方で、これら高性能化の流れは、発熱や消費電力、さらには価格設定にも影響を与えるため、製品選定時には慎重な評価が求められる。ハイエンド志向のユーザーにとっては性能向上の恩恵が大きい反面、コスト面でのバランス感覚も注視すべきポイントとなる。

インテルGPU戦略の不透明感と専用グラフィックスの将来

CPUロードマップが堅調に進む一方で、インテルのディスクリートGPU戦略には揺らぎが見える。ハイエンド向けとして期待されていた「Arc Battlemage BMG-G31」はキャンセルされたと報じられ、代わりにミッドレンジの「Arc B580」のみがラインアップに残された。これにより、NvidiaやAMDと肩を並べる構想は現時点で後退している印象が否めない。

さらに、次世代GPUであるXe3「Celestial」についても、最近の情報更新がなく、開発継続の有無やリリース時期に対する不確実性が高まっている。CPUとは異なり、インテルのGPU部門はまだ市場での実績やブランド力の蓄積が乏しく、専用GPUとしての競争力確立には相応の時間が必要とされる。

現状では、統合GPUを含めたプラットフォーム全体の体験を重視する方向にシフトしているようにも見えるが、独立GPUの開発を後退させれば、今後のゲーム性能や映像処理分野での競争力が限定的になる可能性がある。グラフィックス性能に重点を置くユーザー層にとっては、選択肢の幅が狭まることにつながりかねない。

Source:TechSpot