市場の変動リスクが高まる中、Leuthold Groupのレポートは、ベータ値の低い銘柄が不確実な局面で相対的に優れた成果を上げる可能性を指摘する。高成長テック株「マグニフィセント・セブン」への過熱感が広がる一方、投資家の視線は実体経済と接点を持つ安定的な企業へと移り始めている。
そのなかで注目を集めているのが、米ファストカジュアル大手のChipotle Mexican Grill(CMG)である。同社は3700超の店舗網と堅調な同店売上、加えて高効率なデジタル注文体制を武器に、過去5年間で株価を300%以上押し上げた実績を誇る。直近では業績好調ながら株価が調整され、予想PERも過去最低水準に近づいており、割安感が意識されつつある。
今後は、米国での店舗拡大に加え、海外市場への進出や自動化技術の導入により、さらなる成長余地があるとの分析も示されている。
CMG株、急落と高評価の狭間にある市場の温度差

2025年に入り、Chipotle Mexican Grill(CMG)の株価は年初来で17%超の下落となった。これは市場全体のリスクオフ姿勢の影響を強く受けた結果であり、好決算にもかかわらず株価が約4%下落するなど、投資家心理の不安定さが反映されている。第4四半期の売上は前年比13%増の28.5億ドル、純利益も前年から18%近く伸びたが、同店売上高が市場予想をわずかに下回った点が懸念材料とされた。
一方で、モルガン・スタンレーが同社の格付けを「オーバーウェイト」に引き上げ、目標株価を70ドルとした事実は注目に値する。31名のアナリストのうち24名が「ストロングバイ」もしくは「モデレートバイ」と評価し、平均目標株価も65.87ドルと現在の水準から30%以上の上昇余地が示されている。こうした乖離は、短期的な収益指標への反応と、長期的な成長性に対する評価の違いに起因すると考えられる。
売上の一時的な停滞があっても、CMGの過去5年で300%を超える株価上昇実績や、低下したPERなどの指標からは依然として高い事業収益性と成長力がうかがえる。むしろこの下落局面は、先行きの回復と上昇余地を織り込む前の仕込みどきと捉える視点もあろう。
デジタル戦略と店舗拡大に見るChipotleの成長エンジン
Chipotleは従来型の飲食業態でありながら、デジタル戦略を積極的に取り入れることで差別化に成功している。現在、売上の34%がオンラインを通じたデジタル注文によって構成されており、注文効率と顧客満足度の両立を実現している。今後開業予定の店舗のうち80%以上がドライブスルー対応の「Chipotle Lane」を導入する予定であり、利便性の向上と同時にオペレーションの省力化も進展していく見通しだ。
また、2025年中には315~345店舗の新規開店が予定されており、米国内では年率8~10%の出店ペースが視野に入る。注目すべきは、3700店超を有する米国市場に対し、海外展開はわずか85店舗にとどまっているという点である。これは、今後の国際展開がもたらす潜在的な成長余地の大きさを示しており、現段階ではその初期段階にあると位置づけられる。
加えて、店舗での自動化技術の導入も進められており、将来的には人件費削減と業務効率のさらなる向上が期待される。飲食業界におけるマクロ環境の不透明さを考慮すれば、同社のような機動力と拡張性を兼ね備えたモデルは、逆風下においても強みとなる。こうした戦略的布陣により、Chipotleは単なるファストカジュアルの枠を超えた成長企業としての地位を確立しつつある。
Source:Barchart.com