Appleは、次世代M5チップを搭載したiPad ProとMacBook Proの投入を2025年後半に予定しており、すでに社内では「J817」など複数モデルの最終テストが進行中とされる。M5チップはTSMCの改良型3nmプロセス「N3P」で製造され、処理性能とエネルギー効率がわずかに向上する見込みだ。
M4チップ搭載機では筐体デザインの刷新が行われたが、M5モデルはスペック向上にとどまり、外観変更はほぼないとみられている。MacBook Proについても同様に、M5搭載の新モデルが2025年後半に登場するとされ、大幅な仕様変更は次のM6世代まで待たれる情勢だ。
Appleはすでにモデム内蔵のM6 iPad Proの開発にも着手しており、テクノロジー刷新の次の節目は2026年以降に訪れる可能性がある。
iPad ProとMacBook ProがM5チップで迎える次なる進化

Appleは、コードネーム「J817」「J820」「J821」のM5チップ搭載iPad Proの最終試験段階に入っており、これらは2025年第3四半期末から第4四半期初頭にかけて量産・発売が開始されるとされる。加えて、MacBook Proシリーズにも同様のM5チップが搭載され、例年通りの10月下旬に刷新される見通しだ。
今回のアップグレードは、2024年に登場したM4搭載iPad Proと異なり、外観やデザインの刷新は予定されておらず、内部性能の向上に主眼が置かれている。M5チップはTSMCの3nm改良版「N3P」ノードで製造され、処理速度の向上は5%、電力効率の向上は最大で10%と見込まれている。
従来の進化と比較すると控えめな伸びであるが、日常的な操作における体感速度や消費電力への影響は無視できない。なお、MacBook Proの刷新についても同様に、現行モデルからのデザイン変更は最小限にとどまるとされ、M6登場が予定される2026年までは静的なアップデートが続く可能性が高い。
Appleの製品開発はこれまでもチップの進化によって大きな転換点を生み出してきたが、今回のM5世代は「革新」よりも「安定的な進化」を志向したものと捉えるべきであろう。
M6世代に向けた布石とモデム統合の意味
Mark Gurman氏によると、AppleはすでにM6チップと自社開発モデムを統合した次世代iPad Proの試験にも着手しており、このモデルは2027年に登場するとされる。Appleは長年、Qualcomm製モデムからの脱却を模索してきたが、このM6世代でようやくその戦略が現実味を帯び始めたと見る向きがある。
モデムの自社設計化は、性能の最適化やバッテリー消費の軽減、サプライチェーンのリスク低減という複数の恩恵をもたらす。特に、Mシリーズチップとの統合によってSoC(System on a Chip)全体の効率性が飛躍的に高まり、Appleが目指すハードウェアとソフトウェアの垂直統合の完成形に近づくと考えられる。
この流れは、単なるiPadの進化にとどまらず、MacやiPhoneを含む他のデバイスにも波及する可能性がある。M6チップ登場に向けた布石としてのM5世代の役割は、スペック上の派手さはないものの、開発体制や製品戦略上、きわめて重要な意味を持つ。
性能進化のインパクトが抑えられた今回の刷新は、裏を返せばAppleが次の技術的ジャンプの助走期間に入ったことを示唆しているとも言える。
Source:Cult of Mac