ウォーレン・バフェットは第4四半期にS&P500 ETFのポジションを縮小し、指数が下落する直前に利益を確定させた。背景には、シラーCAPEレシオが35という歴史的高水準に達し、バリュエーションの過熱感があったとされる。
彼は繰り返し「恐怖の中で貪欲になれ」と語ってきた。2025年現在のように市場が調整局面にある時こそ、長期的視点で質の高い企業へ投資する好機と見るべきだという考えが浮上する。MetaやNVIDIAのような成長株にも割安感が生まれつつある。
なお、バフェット自身の2025年の売買動向は未判明だが、「割高な時に売り、割安な時に買う」という原則は一貫している。彼のメッセージは、過熱と恐怖が交錯する現在の相場にこそ、冷静な判断が不可欠であることを示唆している。
バフェットがS&P500 ETFを手放した背景にある「評価の歪み」

ウォーレン・バフェットは2024年第4四半期に、バンガードのS&P500 ETFおよびSPDR S&P500 ETFトラストの売却を進めた。これは、S&P500指数が長期的な企業利益と比して著しく割高となっていたためである。特にシラーCAPEレシオが35という高水準に達したことは、1950年代以降でも稀に見る水準であり、バフェットが「過熱」と判断した根拠のひとつと見られる。
加えて、金利低下期待とAI分野の急成長が相場を押し上げる中、市場の楽観が行き過ぎているという見方もある。こうした状況において、堅実な価値評価を重視するバフェットがポジションを縮小したのは一貫した判断といえる。彼は投機的な熱狂よりも、冷静な数値と長期的な視点に基づいて行動してきた。
バフェットが直接的な警鐘を鳴らすことはないが、その売却行動は市場に対する明確なシグナルとなっている。過去にも割高局面では慎重に動いた例が多く、今回の判断もその延長線上に位置づけられる。企業価値と乖離した価格には距離を置くという姿勢が、一貫した哲学としてあらわれている。
「他人が恐れているときに貪欲になれ」の真意と今日の相場への示唆
1980年代の株主書簡で示された「他人が貪欲なときは恐れ、他人が恐れているときは貪欲になれ」という言葉は、バフェットの代名詞ともいえる。この哲学は単なる逆張りではなく、下落局面においてこそ良質な銘柄を妥当な価格で取得できる、という実利的な発想に根ざしている。現在のようにS&P500やナスダックが調整局面を経験する中で、この原則は再び脚光を浴びている。
市場が不安定な状況では、長期視点を見失いがちになる。株価の一時的な下落に目を奪われると、将来的な企業価値の成長という本質を見誤る恐れがある。Meta PlatformsやNVIDIAなど、AI関連企業の株価が割安圏に入ったとされるのは、まさにその好例である。これらの銘柄は、将来の利益成長に照らしたPERが20倍台と相対的に低くなっており、過去の過熱状態と比較すれば投資妙味が増している。
ただし、バフェットの教えは「何でも買え」というものではない。恐怖に乗じて無差別に買うのではなく、質の高い企業に的を絞り、バリュエーションが合理的な水準に達したときにこそ行動せよ、という含意がある。短期のノイズに揺さぶられず、長期的な見通しと企業の内在価値に目を向けることが、今のような局面では特に求められている。
Source:The Motley Fool