ドイツの大手小売業者Mindfactoryにおける最新の販売データで、AMDがGPU市場での主導権を一時的に握った。Radeon RX 9070 XTが週340台を売り上げるなど好調で、AMDは全体で440台を販売し、NVIDIAの395台を上回った。販売数でシェアの過半数を獲得した形となるが、平均販売価格はNVIDIAが倍以上と高く、収益面では逆転されている。

一方、NVIDIAはRTX 5080が220台を販売し、性能面でも価格面でも存在感を維持している。また、Intelは今週1枚もArc GPUを販売できず、完全に市場から姿を消した。ハイエンド不在と供給難が要因とされる。Mindfactoryは単一チャネルに過ぎないが、動向は競争環境の変化を象徴するものとして注目に値する。

Radeon RX 9070 XTが牽引するAMDの販売好調とMindfactoryの市場構造

Mindfactoryでの最新統計によると、AMDのRadeon RX 9070 XTが週340台を販売し、同社の今週の合計販売台数は440台に達した。これに対しNVIDIAは395台で、数量ベースではAMDが首位となった。RX 9070 XTはXFX製の6モデルが展開されており、供給が安定していたことも販売を後押しした。RTX 5080が220台と健闘して2位に入ったが、スタート時の出遅れを考えると盛り返しは意外性をもって受け止められている。

ただし、Radeon RX 9070の方は2モデルしか掲載されておらず、販売は苦戦している。RTX 5070 TiやRX 7800 XTといった他モデルも一定の存在感は示しているが、上位2モデルとのギャップは大きい。Mindfactoryが単一のリテールチャネルである点は考慮が必要で、全ドイツ市場を代表するものではない。しかし、特定モデルの供給状況と価格設定が購買に直結する現実が明確に表れた事例と言える。

Radeon RX 9070 XTは性能と価格のバランスが取れたポジションにあるとされ、供給の潤沢さが消費者の選択肢を広げた可能性が高い。一方で、まだ他社カスタムモデルの流通が限定的である点からも、今後の供給状況や製品ラインアップの拡充が販売動向に影響を与える余地は大きいと見られる。

収益で劣勢となるAMDと価格帯に支配される市場の現実

販売数量では優位に立ったAMDだが、売上高ではNVIDIAに大きく引き離された。AMDの平均販売価格(ASP)は€751だったのに対し、NVIDIAは€1,549に達しており、金額ベースではNVIDIAが実質的な勝者となっている。この差は主に、NVIDIAがRTX 5080やRTX 5090といった高価格帯製品をラインアップしていることに起因している。対照的に、AMDは現行世代で€1000を超える製品を展開しておらず、価格競争力はあるものの収益では不利となる構造だ。

この価格差は単なる企業戦略の違いにとどまらず、ハイエンド志向のユーザーが一定数存在していることも示している。性能の上限を求める層にとって、価格は必ずしも障壁とはならず、NVIDIA製品が選ばれる背景になっていると考えられる。一方で、価格に対する感度が高いユーザー層では、AMDのコストパフォーマンスが評価されている可能性が高い。

収益面での劣勢は、単に販売数の多寡では測れない市場の多層的な構造を浮き彫りにするものとなった。今後、AMDが高価格帯製品を補完してくるか否か、あるいはNVIDIAが価格を下げてくるかどうかが、次の動向を左右する鍵になり得る。

Intel Arcがリストから消滅 ハイパフォーマンス不在の厳しい現状

今週のMindfactoryにおける販売リストから、IntelのArc GPUが完全に姿を消した。過去に掲載されていたIntel Arc B580カードすら見当たらず、販売台数は事実上ゼロに等しい。これは、Intelが現時点で競争力のあるハイパフォーマンスGPUを投入できておらず、供給能力も十分とは言い難いことを意味している。2種類存在するArcカードのうち、1モデルさえ在庫が確認できない状況は、ユーザーからの選択肢が完全に失われた状態を示している。

IntelはGPU市場参入の後発組であり、ドライバの成熟やブランド信頼度において先行組に対して不利な立場にある。そのため、多少の性能改善だけではシェア拡大には結びつかず、安定した供給体制や製品ラインアップの強化が不可欠となる。しかし、現状ではそれらの基盤が整っておらず、販売網の中から自然と排除されてしまった形だ。

今後、競争に再び参入するためには、単なるコストや性能の改善だけでなく、明確な差別化やサポート体制の充実が求められる。現時点では、IntelのArcシリーズは市場で真剣に比較対象とされる段階に達していないという厳しい現実が浮き彫りになっている。

Source:Wccftech