Appleが新たに発表したM3チップ搭載の9コアGPUが、初めて2025年のiPad Airに搭載された。このGPUは、TSMCの3nmプロセス(N3Bと推定)による製造で、最大100 GBit/sの帯域を持つ128ビットのメモリバスと8GBのLPDDR5-6400ユニファイドメモリに対応している。新アーキテクチャには、ダイナミックキャッシングやメッシュシェーディング、ハードウェアによるレイトレーシングの加速も含まれ、最大15.8Wの消費電力でGFXBenchや3DMarkといった主要ベンチマークで高いスコアを記録。

実際のゲーム環境でも『Genshin Impact』や『Diablo Immortal』などで60fps近くを維持する性能を示している。エネルギー効率とパフォーマンスの両立を目指す今回の設計は、タブレットにおけるGPU性能の常識を塗り替える可能性を秘めている。

進化したGPUアーキテクチャが実現する描画性能と効率性の両立

Apple M3の9コアGPUは、従来のMシリーズと一線を画す新設計によって高性能と省電力のバランスを追求している。TSMCの3nmプロセス(N3Bと推測されている)により、わずか15ワット前後のTDPでGFXBenchや3DMarkといったベンチマークにおいて堅実なスコアを記録。特にGFXBenchのT-Rex HDでは平均546 fpsを叩き出しており、軽量タイトルにおいてはフレームレート上限を突き抜ける勢いを見せた。

さらに、128ビットのメモリバス経由で最大100 GBit/sの帯域を誇るLPDDR5-6400ユニファイドメモリにアクセス可能で、メッシュシェーディングやレイトレーシングの加速にも対応。これにより、リアルタイムの光の反射や陰影の描画においても従来より高精度な表現が可能になっている。また、ダイナミックキャッシングの導入により、グラフィックメモリの使用効率が改善され、必要最小限のリソースで処理が行える点も注目に値する。

このような構造は、軽量アプリから高負荷なグラフィック処理まで幅広く対応する柔軟性を持つが、その反面、すべてのアプリがこれら新技術を即座に活用できるわけではない。ハードの性能だけでなく、対応するソフトウェアの進化が問われるタイミングに差し掛かっている。

実機ベンチマークに見るM3 GPUのポテンシャルとその限界

NotebookCheckによる詳細なベンチマーク結果からは、Apple M3の9コアGPUが現実的な使用環境下でも高いパフォーマンスを維持している様子が浮かび上がる。3DMark Wild Life Extremeでは最大5611ポイント、GFXBenchのAztec Ruins High Tierでは最大71 fpsを記録し、ベンチマーク全体を通じて安定した描画力を発揮している。これにより、動画編集やゲームプレイといった負荷の大きな処理にも十分耐えうる設計であることがうかがえる。

一方、GFXBench Car Chaseでは最大171 fps、Genshin ImpactやPUBG Mobileといった実ゲームのベンチマークでは、いずれもウルトラ設定で約59 fpsを維持している。ただし、いずれも60 fpsを若干下回っており、ハイフレームレート志向のプレイ環境を求める層にとってはやや物足りなさが残るかもしれない。GPU性能が高くても、ゲーム側の最適化やOSの描画制御の影響を受ける点は無視できない要素である。

このことから、M3 GPUはタブレットでのゲーム体験やマルチメディア処理において非常に優れた選択肢ではあるが、すべてのシーンで万能とは言い切れない。性能に余裕があるからこそ、それを活かす周辺環境やアプリ設計がより重要になる局面に来ているといえる。

Source:NotebookCheck