AppleがM4 iPad ProやiPhone 16シリーズに導入した高度な熱設計技術が、M4チップを搭載するMacBook Airには適用されなかったことが明らかとなった。iPad Proでは銅素材のロゴ構造やグラファイトシートにより放熱性能が20%向上し、iPhoneでも設計見直しが行われた一方、MacBook Airの内部構造は前モデルとほぼ変化がなかった。
特に2022年以降のMacBook Airは金属製ヒートシンクを廃し、放熱能力が相対的に低下した経緯があり、薄型・軽量で発熱の影響を受けやすい本モデルこそ改良の恩恵を受けるべきだったとの指摘も出ている。Appleの静かな判断が高性能を求めるユーザーの選択肢をMacBook Proへと誘導する戦略なのか、単なる見送りだったのか、その意図をめぐって議論が続いている。
iPad ProとiPhoneで先行した放熱技術の進化と具体的な設計変更

2024年に登場したM4 iPad Proでは、Appleは熱設計を大きく刷新した。内部には新たにグラファイトシートが敷かれ、Appleロゴ部分に銅素材を組み込むことで、従来比20%の熱性能向上を実現したとされている。これにより、プロセッサの長時間駆動時における発熱を抑制し、性能の持続性が高まった。
iPhone 16シリーズでも冷却機構の改良が見られた。iPhone 15 Proで生じた過熱問題を受け、Appleはバッテリー搭載設計を見直し、放熱性とメンテナンス性を両立させる内部構造に再設計した。特に発熱源と筐体構造の距離を最適化する設計思想が強く反映されており、スマートフォンにおける冷却の重要性が再認識されたと言える。
このように、Appleは近年の主要製品において、冷却性能を単なる補助的機能ではなく、中核的な設計要素として位置づけてきた。ユーザーの使用時間の延長や高負荷処理の安定性を考慮する上で、冷却の質は性能の一部と見なされつつある。
M4 MacBook Airが見送られた理由と熱設計軽視による影響
M4 MacBook Airには、M4 iPad ProやiPhone 16で採用された冷却強化策が導入されなかった。内部構造を分析したiFixitによれば、本体設計は前モデルと大差なく、グラファイトシートのみの簡易放熱構造にとどまっていた。薄型軽量を重視する設計思想のもと、従来の金属製ヒートシンクはすでに排除されており、高負荷時の熱制限は依然として避けられない構造である。
MacBook AirはAppleのエントリーモデルであるが、Mシリーズの高性能化により動画編集や仮想化作業など、高負荷作業に用いるユーザーも増えている。にもかかわらず、iPadOSベースのiPad Proに比べて熱管理において劣後した構造が維持されている点は、製品戦略上の差別化とも受け取られかねない。
性能向上を訴求しながら、熱処理の根本設計が旧態依然のままであることは、利用者の期待との乖離を招く可能性がある。冷却が不十分なままでは、持続的な処理性能の発揮が困難となり、結果としてM4チップの潜在能力を最大限活用できない場面も想定される。
Source:9to5Mac