サムスンは最新のBespoke AIシリーズにおいて、コードレス掃除機や洗濯機といった家電に大型LCDスクリーンとAI技術を融合させ、通話やメッセージ通知への対応機能を実装した。例えば、1,099ドルの「Bespoke AI Jet Ultra」は掃除中でも着信を見逃さず、3,099ドルの洗濯乾燥機「Bespoke AI Laundry Vented Combo」では通話応答まで可能となる。
これらの機能はSmartThingsアプリとサムスンアカウントを通じて、スマートホーム全体と連携する設計となっている。一方で、冷蔵庫やオーブンまで含めた“家中スクリーン化”戦略には、過剰投資や耐久性への疑問の声もある。スクリーン破損時の高額な修理費や、広告表示への転用といった懸念も拭えない。利便性と引き換えに、生活空間のデジタル依存が新たな課題を生む可能性も見えてきた。
通知対応型家電の進化とBespoke AIシリーズの特徴

サムスンが発表した「Bespoke AI Jet Ultra」は、掃除機の常識を覆す情報受信機能を搭載している。LCDディスプレイにより、掃除中でもスマートフォンの着信やメッセージを視認できる点は、家事中の情報断絶を解消する意欲的な試みといえる。吸引力は400AW、稼働時間は最大100分と、性能面でもハイエンド機としての水準を満たしている。
さらに、洗濯と乾燥を一体化した「Bespoke AI Laundry Vented Combo」では、7インチのタッチスクリーンを通じて通話応答が可能となっており、洗剤の自動投入や洗濯完了時のドア自動開放機能など、従来のオートメーションを一段と深化させている。これらの機器は、SmartThingsと連携し、家庭内の他のデバイスと統合される。
通話応答やレシピ送信といった複数の用途を一つのスクリーンで処理できる設計は、家庭内での時間と動線の最適化を狙ったものと考えられる。ただし、機器の価格はJet Ultraが1,099ドル、Vented Comboが3,099ドルと、いずれも高価格帯に位置づけられており、一般消費者への普及には価格と価値のバランスが問われる展開となるだろう。
家電の“スクリーン化”がもたらす利便性とリスクの両面
サムスンが掲げる「AI Home」構想では、冷蔵庫、オーブン、洗濯機、掃除機などあらゆる家電製品にスクリーンとAIを融合させることで、生活全体を一元管理するというコンセプトが貫かれている。例えば、冷蔵庫内の食材をカメラで把握し、レシピを提案、調理指示をオーブンに送信する一連の流れは、従来の家事工程を再定義するものといえる。
だが、こうした“家中スクリーン戦略”には懸念も付きまとう。まず、操作の中心がタッチスクリーンとなることで、故障時の修理費が高騰する可能性がある。特に21.5インチや32インチといった大型パネルを搭載した冷蔵庫の場合、画面の破損が致命的なコスト要因になりかねない。また、製品寿命を超えてソフトウェアが陳腐化するリスクも無視できない。
さらに、現在は行われていないものの、将来的にスクリーン上への広告表示が導入される懸念もある。AmazonのEcho Showで見られるように、スマートディスプレイがマーケティングの媒体と化すことは既に現実化している。利便性の裏側に、生活空間への商業的侵食という新たな課題が浮かび上がっている。
Source:The Verge