オーストラリア市場における急激な株価下落が続く中、多くの投資家がASX銘柄の売却を検討する局面に直面している。しかし、バークシャー・ハサウェイを率いるウォーレン・バフェットは、短期的な市場変動に反応する売却行動に警鐘を鳴らしてきた。
「市場が恐怖に包まれる時こそ買いの好機」と語るバフェットは、「価格は支払い、価値は取得物」との格言を引用し、価格下落時の買い増しを推奨する。彼にとって株式売却は「誤りの証」であり、理想的な保有期間は「永遠」と断言するほどの信念を持つ。
市場の変調に動揺する投資家にとって、こうした姿勢は単なる理想論ではなく、長期的資産形成の核となる視座を提供している。売るか否かではなく、何を持ち続けるかが試されている。
株式市場の動揺と「市場タイミング戦略」の落とし穴

2025年3月末にかけてASXを中心とした市場全体が急落したことにより、多くの投資家が保有株の売却を迫られる心理状態に陥っている。こうした局面で頻繁に取られる戦略が「今は損を最小限に抑えて売却し、後に相場が戻った際に再び買い戻す」という市場タイミング型の取引である。この手法は理論上は合理的に見えるものの、過去の複数の研究が示す通り、実際の成果は芳しくなく、結果的にリターンの最大化を阻害する傾向がある。
ウォーレン・バフェットはこうした短期的な判断による売却を一貫して否定してきた。バークシャー・ハサウェイ(NYSE: BRK.A / BRK.B)の投資哲学では、企業価値に着目した長期保有が基本とされ、株価の一時的な下落はむしろ好機として捉えられる。実際、彼は市場が恐怖に包まれたときこそ「お買い得品が手に入る」と語り、下落相場での買い増しに積極的である。
市場タイミング戦略の問題点は、再エントリーの判断の難しさと、感情に左右されやすい点にある。売却時は恐怖、買戻し時は楽観という人間の心理がリターンに大きく影響する。バフェットの言う「恐怖の中で買い、熱狂の中で売る」姿勢とは真逆の行動が、一般投資家の損失要因となっている。
「永遠保有」の真意とバフェットが重視する企業価値
ウォーレン・バフェットが語る「我々の好ましい保有期間は永遠である」という言葉は、単なる名言ではなく、投資判断の中核をなす哲学である。この発言の背景には、彼が重視する企業価値の評価と、それに基づく長期的な資産形成戦略がある。株価が一時的に下落しても、企業そのものの価値や将来性が変わらないのであれば、保有を続けるべきであるという考え方が根底にある。
特にバフェットが参照するベン・グレアムの教え、「価格は支払うもの、価値は得るもの」は、市場価格と本質的価値の乖離を冷静に見極める視点を提供する。たとえ相場が乱高下していても、企業の内在的な価値が毀損していなければ、投資対象としての魅力は損なわれないという論理である。これは短期的な株価のノイズに惑わされず、冷静な分析を貫く姿勢を象徴している。
また、ハンバーガーの価格に例えた「価格が下がれば喜ぶ」という彼の比喩は、株式に対する大衆の非合理的な行動への皮肉を含んでいる。安くなることは購入の好機であるにもかかわらず、多くの人が下落時に手放してしまう。この逆説的な反応を乗り越えるために必要なのは、確固たる企業理解と揺るがぬ信念である。
株価下落局面で問われる「売る理由」の正当性
株価が急落した際に株を売却するという判断は、しばしば直感的かつ感情的に行われるが、バフェットにとってそれは「何かしらの誤りを犯した証拠」であるとされる。彼の姿勢は明確であり、株価が下がったという事実そのものは、売却の理由としては不十分だと断じている。実際に売却すべきケースは、投資先企業の経営に致命的な変化が生じた場合や、初期の判断が根本的に間違っていたと明らかになった場合に限られる。
これは、投資判断の基礎が「企業の本質的価値」に根ざしているというバフェットの信条を反映している。一時的な市場の動きに動揺して投げ売りするのではなく、当初の投資理由が今も成り立っているかを冷静に見極めることが求められる。市場が大きく揺れた際ほど、投資家は「なぜこの企業に投資したのか」を再確認すべきであり、その理由に変化がない限り、保有継続が最適な選択肢となる。
一方で、これは盲目的な保有を推奨するものではない。企業の収益構造や市場ポジションに明確な悪化が見られる場合には、柔軟な判断が求められる。重要なのは、感情ではなく論理と根拠に基づいて「売る理由」を定義できるか否かであり、そこに長期投資家としての成熟度が問われている。
Source:The Motley Fool