バークシャー・ハサウェイが保有する現金および短期投資額は2024年末に3,340億ドルへと膨れ上がった。株式売却による資金調達を背景に、わずか1年で現金残高を約2倍にしたこの動きは、将来的な大型買収や市場急変時の投資機会を視野に入れた戦略と見られる。
一方、創業者ウォーレン・バフェットは2025年に95歳を迎える。長年の後継者候補であるグレッグ・アベルの名が明言されているものの、経営交代の時期や市場への影響は依然不透明である。
今後5年で、史上最大級の現金活用とCEO交代という二つの構造的変化が、同社の方向性と市場評価を大きく左右する可能性がある。
現金3,340億ドルの蓄積が示す投資待機姿勢と市場環境の読み

バークシャー・ハサウェイが2024年末に保有した現金および短期投資は3,340億ドルに到達した。第2四半期には株式ポートフォリオの一部売却により2,770億ドルへ、そして第3四半期には3,250億ドルと、四半期ごとに段階的な増加が見られた。バフェット率いる投資チームが現金ポジションを強化し続けた背景には、明確な買い場を慎重に見極める姿勢が浮かび上がる。
株価が過熱する局面では無理な買収に走らず、資本を温存するのがバフェット流である。これは過去の危機時、例えば2008年の金融危機でゴールドマン・サックスやGEに果敢に出資した実績にも通じる。現金の蓄積は無策の証ではなく、有事における決断力と規模の裏付けとなる。バークシャーの財務体力は、市場に波乱が生じた際の資本配分において競合を圧倒するポジションを確保していると言える。
市場が不安定さを増す中で、買収機会を伺うスタンスを崩していない同社の姿勢は、依然として機を見て動く冷静な戦略を物語っている。近年のM&Aが過熱気味であることも、あえて動かない理由の一つと考えられる。現金保有は単なる数字の誇示ではなく、時を待つ覚悟と分析の積み重ねに他ならない。
グレッグ・アベル体制への移行が示す継承戦略の現実味
2025年に95歳を迎えるウォーレン・バフェットは、長年のパートナーであるチャーリー・マンガー亡き後、実質的な経営後継者としてグレッグ・アベルを指名している。アベルは既にバークシャーの非保険事業部門を統括しており、経営の中枢に位置づけられている存在である。バフェット自身がその能力と哲学を信頼していると明言しており、世代交代の準備はすでに組織内部で進行している。
アベルはバークシャー内部で長年育成されてきた人材であり、外部からの登用ではないことが意味するのは、バフェット流経営哲学の継承である。これは突如として外部から経営陣を招くような不連続な転換ではなく、文化的にも一貫した流れを維持するための選択と読み取れる。投資家にとっても、企業の価値観と意思決定プロセスが大きく変質するリスクは限定的であると受け取られる可能性が高い。
ただし、バフェットという「人格」が象徴してきたブランド力と市場への影響力は、単なる経営能力の継承だけでは再現が難しい側面がある。バフェット個人のコメントや動き一つで市場が反応してきた時代は、アベルの時代には終焉を迎えるかもしれない。その変化を企業としてどう吸収し、株主との関係を維持していくかが、新体制における最初の試金石となる。
Source:Motley Fool