ビットコインを一部に組み込んだ新たな政府債券「ビットボンド」が、米国の財政構造に変革をもたらすかもしれない。構想の核は、従来型国債の一部資金をビットコインに転換し、上昇益で利払い負担の軽減を図るという仕組みにある。
過去最大規模に膨張する米国債務への対応策として、低クーポン発行と暗号資産の成長性を組み合わせたこの構造は、保守的な投資家にも訴求力を持つとされる。制度的な制約が緩和されれば、年金基金や大学基金などからの資金流入も現実味を帯びる。
財政赤字と金融不安定性が交差する現在、リスクを限定しつつも高収益を狙うビットボンドの発行は、単なる奇策ではなく、長期的な財政再編の一手として注視すべき試みとなりうる。
債務圧縮の新戦略となるか ビットボンドの仕組みと財政への影響

ビットボンドは、米財務省が発行する低クーポン債と、価格上昇が期待されるビットコインへの投資要素を組み合わせた新たな金融商品である。具体的には、発行額の一部をビットコインに割り当て、満期時にその価格が上昇していれば追加利益を得られるという構造を持つ。元本は保証されているため、価格変動リスクが限定される一方で、上昇益を享受する可能性も残されている。
米国債の利払い負担は年々増大しており、2025年時点で利子支払いは年間で数千億ドル規模に達する見込みだ。仮にビットボンドを2兆ドル発行し、従来の4〜5%ではなく1〜2%の利率で市場に出せれば、10年間で7000億ドルもの利払いを削減できる可能性が示唆されている。この枠組みは、財務省にとって利率を抑制しつつ、ビットコイン価格の成長に基づく元本返済余力を確保するという二重のメリットを持つ。
ただし、価格変動が激しいビットコインに国家が依存する形は、政策的リスクを伴う。政府債務の一部を暗号資産に委ねる判断は、経済成長と市場の安定性への深い洞察を求められる選択肢となろう。
保守的投資家にとっての意義と制度的課題
伝統的な国債に比べて、ビットボンドは即時のキャッシュフローを生まないが、長期的な資産成長の可能性を備える点で年金基金や大学基金など保守的な運用機関にも検討価値があるとされる。特に、元本が保証されたうえで上昇益が得られるという点は、ビットコイン投資の入口として魅力的に映る。現行制度上は一部の機関投資家に対する規制が存在するが、それが緩和されれば大規模な資金流入が期待される。
こうした新債券の設計は、投資家がリスク資産と安全資産のバランスを再考する機会となる。債券の一部に埋め込まれたビットコインへのエクスポージャーは、あくまで限定的であり、損失が発生しても国債部分で一定の保護が担保される。そのため、リスク許容度の低い機関であっても、ポートフォリオの一部として慎重に導入する動きが出てくる可能性がある。
ただし、こうした投資が広がるには制度的な整備と、会計処理やリスク評価に関する明確なガイドラインの策定が不可欠である。市場が安定的に形成されるまでは、ビットボンドが持つ潜在力は評価されつつも、様子見の姿勢が優勢となるだろう。
Source:Forbes